著者
関東ローム研究会
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
no.54, pp.32-39, 1961-05-03

表題に示すとおり,これは関東ローム研究の1959年現在の知識を総括したものである.これを要約するとつぎのとおりである.1."関東ローム"の名称には批判があるが,このつかいなれたことばを,"関東地方の洪積世火山灰層"と定義する.2.関東ローム層は,4つの層序的単位,すなわち上から,立川・武蔵野・下末吉および多摩の各層にわけられ,その段丘面上の産状は第1図のようである・3.南関東では関東ローム層は上記のようにわけられるが,北関東の宇都宮付近では,上からA_1・A_2・A_3およびA_4の4層に,前橋付近では,上中および下層にわけられる.これらのローム層の起源は,関東平野の西ないし北西周辺部の火山,すなわち,箱根・富士・赤城・榛名および浅間火山にもとめることができる・4.南北関東のこれらの層序関係は,浮石層・暗色帯・クラック帯などを追跡することによって明らかにされた.これにより,岩宿文化,不二山文化など無土器文化層の層位がたしかめられた.5.ローム層に関連する地形面,堆積物および化石層などの対比により,海面変化の様子がわかった.屏風ガ浦・下末吉および有楽町海侵は,氷河性海面変化と考えられる.6.結論を総合したものが第4図の編年表であり,これは日本の第四紀編年の基準となるものであろう.'(関東ローム研究グループの仕事は永い間にわたり,その成果は,火山灰による第四紀層序学としては,かなり典型的なものである.そのような意味で,本論文は外国向けに,その成果を紹介しようとしてかかれたものである.原稿が完成したのは1960年5月であったが,事情があって印刷されず,今回,地球科学に掲載のはこびとなったものである).