著者
安藤 剛寿 関谷 好之 上原 貴夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, no.1, 1997-03-06
被引用文献数
1

各プレイヤは, 自分のハンドの他に, パートナのハンドのイメージと, パートナから見た自分のハンドのイメージを持つ. 私はつぎのビッドを決めるために, パートナのビッドを観察して, アブダクションによりパートナのハンドのイメージ (ビッドをした理由を説明できる仮説) を作る. ところが, パートナのビッドが, 彼女の持つ私のハンドのイメージによって決定されたものならば, 彼女が私のビッドからアブダクションによって作った私自身のハンドのイメージについても知る必要がある. さらに, 彼女の持つ私のイメージにも私が持った彼女自身のイメージが含まれる. このように, 各プレイヤはビッドのシーケンスを逆に辿って再帰的にアブダクションを行い, 観察したビッドのシーケンスを説明できるハンドのイメージを得ると考え, これをビッドを行うプレーヤのモデルの基本とした. このプレーヤがオークションにおいてパートナと協力して良いコントラクトに到達するかどうかは, ニ人の用いるビディングシステムによって左右される. 本研究では, よく知られたChales Gorenの本にあるビディングテーブルに従っている. しかし, このテーブルは最初の3つのビッド (オープニング, レスポンス, リビッド) しか決められないので, その後のビッドは常識的な判断に従うようにした. 例えば, 自分のハンドの点とパートナーのハンドのイメージにおける点の最小値を合計して24点以上, 31点以下ならばゲーム (4ハート, 4スペード, 3ノートランプ) をビッドする.
著者
安藤 剛寿 関谷 好之 上原 貴夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, 1997-08-13
被引用文献数
1

ブリッジは不完全情報ゲームであり, 他人のハンドが見えないことがプレーを難しくしている. 他人のハンドを見て行うプレー (ダブルダミーとよばれる) は, 完全情報ゲームとなるので, 比較的扱いやすくなる. そこで, 見えない他人のハンドを (既知の制約条件のもとで) ランダムに生成し, それを見てダブルダミーでプレーする方法が提案されている. これは, 他人のハンドを覗いたわけではないのでフェアプレーである. 我々は, ゲームの進行中に観察した事実から, アブダクションと仮説推論により他人のハンドを推論す方法について別に報告した. ここでは, この推論によって得た制約条件のもとで, ハンドをランダムに生成する方法を提案する. このハンド生成プログラムは, 我々が開発中のコンピュータブリッジのプレーで繰返し使われる.
著者
安藤 剛寿 関谷 好之 上原 貴夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.2366-2375, 1998-10-25
被引用文献数
11

上級者と対等に勝負ができるコンピュータブリッジを開発するには, 不完全情報ゲームに特有なさまざまな課題を解決する必要がある.我々は, これに挑戦することにより新しい問題解決手法の研究を進めている.ブリッジにおけるオークションの過程では, 限られたビッドを通してパートナと情報を交換しつつ, 互いに協力して良いコントラクトに到達する努力がなされる.本論文では, 従来のプログラムより人間的(柔軟)なビッドができることを目指して立案した枠組みについて報告する.まず, ビッドにおけるパートナシップを共通の知識と仮説推論機構をもつ二つのエージェント間のコミュニケーションとしてモデル化した.その知識は専門知識と常識に分け, 前者から外れた相手のビッドに対しても, 後者を用いて対応できるようにした.また, パートナのハンドを推論する際には, パートナがこちらのハンドについてどのようなイメージをもっているかも推論し, より妥当な仮説の生成に努めた.その結果, 相手に応じた柔軟なビッドをするプログラムをつくることができた.