著者
阪井 哲男 橋本 佳美
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.591-596, 2000-12-31 (Released:2017-02-13)
参考文献数
23

発熱を主訴に一般外来や救急外来を受診する小児は依然として多く,発熱のみでも,救急車で来院するケースさえいまだに存在する。今回,小児の発熱についての理解の程度を調査することを目的とし,両親,看護学生に対して,アンケート調査を行った。ほとんどの場合, 「高熱」ではない体温でも心配し,発熱自体が中枢神経障害の原因となると考え,不必要に解熱剤の投与,冷却を行っていた。両親は発熱に対する知識を医療従事者から,学生は両親より得ていることが多かった。学生に関して,正常の体温,発熱のメカニズムに関して,ほとんど正しい知識を持っていなかった。両親の発熱に関する考えは間違っているが,この点で正しい知識を与えていない小児科医を初めとする医療者側にも責任の一端がある。発熱に対する正しい概念を, 4ヶ月時と18ヶ月時の乳児健診で説明するなどの啓蒙活動が必要である。また,日常の診療の場で,医療従事者は,「熱」に対する過剰な反応をせず,熱よりも他の症状がより重要であることを説明することが必要である。
著者
黄 舜範 村田 厚夫 脇坂 晟 吉江 利香 土屋 克巳 斉藤 喬士 武市 俊明 阪井 哲男 高見 佳宏 林 潤一 会沢 勝夫
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.391-399, 2004
参考文献数
28

レーザー光照射装置と光増感物質の進歩により,Photodynamic therapy(PDT)は近年,癌などの治療に用いられるようになってきた。その細胞に及ぼす影響を分子生物学的に解明することは,本療法の副作用を防止して,その効果を充分に引き出す上で重要であろう。そこでヒト培養細胞にPDTを施行した際に生ずる遺伝子発現の変動をcDNA発現アレーによって解析することを試みた。健常成人皮膚より調製した線維芽細胞を,光増感剤talaporphin(mono-L-aspartylchlorin e6,NPe6)10mg/dlとともに37℃1時間培養し,ダイオード,イオン,レーザー照射装置を用いて,664nmの可視光により1.00J/cm^2の線量で照射し,その後,さらに37℃で10分間培養した。この細胞からRNAを抽出し,逆転写反応により[^33P]標識cDNAプローブを調製した。このプローブとNylon membrane arrayとをハイブリダイズし,その結果をイメージング,プレートおよびイメージ,スキャナーを用いて解析した。その結果,PDTを受けた直後の線維芽細胞においては,アポトーシス関連遺伝子では,RARB(retinoic acid receptor beta)以外には有意の発現増大を示す遺伝子は見られず,むしろ膜輸送,細胞増殖,細胞内シグナル伝達および転写などに関連する遺伝子,特にCキナーゼ,S6キナーゼおよびCREBなどの発現増大が特徴的であった。この結果はPDT処理直後の細胞においては,細胞内シグナリング,カスケードが活性化されていることを示唆するものと考えられる。