- 著者
-
阪間 稔
- 出版者
- 徳島大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究の研究目的は,中性子不足アクチノイド核種領域の特異な壊変形式である電子捕獲遅延核分裂(ECDF ; Electron Capture Delayed Fission)と,その微弱なα壊変を詳細に調べることである.この研究から得られる実験データは,地球上にこれまでウランより重い元素が存在しない理由を明らかにするだけでなく,超アクチノイド元素の原子核質量値を実験的に与え,不安定核種領域における原子核の安定性に関する新しい知見を与えてくれる.本年度は,当該研究題目の最終年度にあたる.本研究の初年度(平成17年度)から引き続き,これまでECDFと微弱なα線を高効率かつ,同時計数測定するための特殊な測定装置システムの開発に継続的に着手してきた.これまでの研究概要として,初年度では,本研究の特性上,大型加速器施設(日本原子力研究開発機構タンデム加速器や,理化学研究所AVFサイクロトロンなど)を使用するので,個々の実験期間で各々の施設における固有のデータ収集系システムを使用するしかなかった.しかしながら,当該研究費により,我々独自のスタンドアロン形式によるデータ収集系システム(マルチイベント解析モジュールの岩通計測A3100システム)を整備することができ,各実験でのオンラインデータ間の整合性を一元化し,迅速かつ正確に解析することができるようになった.本年度(平成18年度)では,ECDF測定装置システムに組み込む予定であったECDF現象に伴う特性X線及びγ線を検出するための高純度ゲルマニウム半導体検出器を整備した.そこで,上記のデータ収集系システムとの動作試験を繰り返し行い,十分にオンライン実験に対応できることを確認した.今回,研究計画の予定であったECDF現象に伴う核分裂片や,その現象後の微弱なα線検出のためのSi表面障壁型半導体検出器の整備で,若干の不備が生じ,この点について計画通りに進めることができなかった.今後も引き続き,この問題点について改良・改善していく予定である.本研究と密接に関連して継続的に行っている共同研究である日本原子力研究開発機構の浅井氏らとのオンライン実験(^<259>Noのα-γ核分光実験)に参加した.この実験により,微弱なα線測定方法について議論を交わし,^<259>Noの基底状態の中性子軌道配位を決定することができた.