- 著者
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花田 毅一
阿久津 郷子
後沢 昭範
- 出版者
- 日本作物学会
- 雑誌
- 日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.1, pp.67-73, 1969-03-10
とうもろこしについて, 品種の分げつ性とオーキシンとの関係を知る目的でこの研究を行なつた. 分げつ性の低いホワイトデント(WD)と分げつ性の高いゴールデンクロスバンタム(GC)を戸外で栽培し, 第5葉抽出完了期に採取して下位節として第3節, 中位節としての第4, 5節および先端部の第6節以上の3部に分け, そのオーキシン含量, IAA酸化酵素活性および酵素阻害物質の量について測定比較した. なお, 分げつの状態は, 材料採取時には, 第2, 3節分げつでは品種間差異が明らか(GC>WD)であり, 第4節以上の分げつ芽では採取当時は差がなく, その後差が現われた(GC>WD). オーキシン含量については, 先端, 中位節, 下位節いずれの部分でもWDの方がGCよりも著しく高い値を示した. また, WDはGCよりも阻害物質を除いた純化IAA酸化酵素の活性が低く, また阻害物質の量が多かつた. そしてこの差は先端部において著しかつた. 従来, 植物の分枝の発育にオーキシンが関係する, すなわち頂芽で生産されて基部に向つて転流するオーキシンが側芽の生長を抑制すると考えられている. 一方, 植物体内のオーキシン濃度を左右するものにIAA酸化酵素と, その阻害物質および促進物質が存在することが知られている. 実際に, IAA酸化酵素の阻害物質あるいは促進物質が, えんどうでの頂芽および節間の生長, さらに棉での落葉に関係することを示す実験結果が報告されており, IAA酸化酵素系がオーキシン濃度を通じてこれらの現象に関与することを暗示している. この実験においても, とうもろこしの分枝性について, 茎中のオーキシン含量の高いWDがその低いGCよりも分げつ性が弱く, 茎中の高濃度のオーキシンが分げつの発育を抑えていること, さらにこのようなオーキシン濃度の差を起こす有力な原因として茎中のIAA酸化酵素活力ならびに阻害物質の量の差があることが考えられる.