著者
大藪 泰 阿佐見 徹
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.94-99, 1987-02-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

現場における漆塗りの見地にたち, 漆膜の透明性におよぼす硬化条件の影響を明らかにする目的で実験を行った。つまりスグロメ漆を試料とし, 種々の硬化条件 (温度 : 20℃・30℃, 湿度 : 60-98%RH) で24時間硬化させ・その後硬化膜を北窓自然光に90日間放置した。以上の経時変化についてIR分析や分光透過率測定を中心に行った。結果をまとめると次のようである。(1) 高湿条件下で硬化した漆膜は低湿のそれに比べ, ウルシオールキノンやキノン重合物が多く生成されたため, 透明性の悪い膜となった。(2) 北窓自然光に放置した漆膜はウルシオールキノンが徐々に消費され, そのため次第に透明性は向上した・しかし透明性の向上が落ち着く90日後においても硬化条件の違いによる透明性の差は残った。(3) 乾燥時間 (RCI型乾燥時間測定機による) と透明性の関係において, 乾燥時間の増加にともない透明性は上昇し, そしてある乾燥時間を越えるとほぼ一定となった