著者
鳥越 香織 中山 直樹 阿知和 宏行
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.148, no.3, pp.154-161, 2016
被引用文献数
1

<p>近年,多発性骨髄腫では新規薬剤が開発され,治療成績が向上している.しかし,現在のKey drugであるプロテアソーム阻害薬ボルデゾミブおよび免疫調整薬(Immunomodulatory drugs:IMiDs<sup>®</sup>)レナリドミドの2剤に治療抵抗性・不応性になった患者に対する有効な治療選択肢は極めて限られており,新たな薬剤が求められている.ポマリドミドは,米国セルジーン社が創製したサリドマイド,レナリドミドに続く新規のIMiDs<sup>®</sup>であり,主作用として直接的殺腫瘍作用,免疫調整作用,骨髄微小環境への作用を示す.また,経口カプセル剤のため,骨髄腫患者にとって治療に伴う負担が軽く,利便性が高い.非臨床試験からは,in vitroでは同じIMiDs<sup>®</sup>のレナリドミド耐性株においても腫瘍増殖抑制やアポトーシス促進が示され,in vivoではレナリドミドと交差耐性を示さないことが確認された.ポマリドミドの標的は442個のアミノ酸から成るセレブロン(Cereblon:CRBN)であり,CRBNは催奇形性の主要な原因因子であることが分かっている.最近の研究結果から,このようなCRBNを介したIMiDs<sup>®</sup>の作用機序が解明されている.臨床においては,米国で行われた第Ⅰ/Ⅱ相試験(MM-002)でデキサメタゾンとの併用効果が認められ,欧州で行われた第Ⅲ相試験(MM-003)でデキサメタゾンとの併用によりボルテゾミブおよびレナリドミド抵抗性の患者にも有効性が確認された.本邦では2012年より日本人対象の治験を開始した.日本人再発難治骨髄腫患者を対象とした第Ⅰ相試験(MM-004)では,ポマリドミドの薬物動態学的パラメータは海外試験の結果と類似し,安全性プロファイルも同様であった.再発難治骨髄腫日本人患者でのデキサメタゾンとの併用におけるポマリドミド4 mgの有効性および安全性については,後の第Ⅱ相試験(MM-011)にて確認された.2014年6月には希少疾病医薬品の指定を受け,海外での臨床試験成績および国内臨床試験の結果を踏まえ,2015年3月に「再発又は難治性の多発性骨髄腫」に対する製造販売承認を取得した.ポマリドミドは,レナリドミドやボルテゾミブによる治療にもかかわらず再発・進行した難治性の多発性骨髄腫に有効な薬剤であり,骨髄腫疾患領域のアンメット・メディカル・ニーズを満たす画期的な新薬である.なお,本剤は催奇形性を有する可能性があるため,レブラミド<sup>®</sup>・ポマリスト<sup>®</sup>適正管理手順(Revmate<sup>®</sup>:レブメイト)の下での使用が承認条件として定められている.</p>