著者
吉村 玲児 堀 輝 香月 あすか 阿竹 聖和
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.233-236, 2016-09-01 (Released:2016-09-13)
参考文献数
11
被引用文献数
1 7

メージュ症候群は,顎口腔部や顔面のジストニアを特徴とする比較的稀なジストニアである.不随意に生じる瞬目や顎の突出も伴う.舌の突出,閉眼滑舌不良あるいは広頸筋の突っ張りなどの症状が認められる事もある.症例は44歳の日本人統合失調症の患者である.初発症状は,幻聴,迫害妄想,精神運動興奮,連合弛緩,落ち着きのなさであった.何種類かの抗精神病薬が試みられた後,リスペリドンによる治療が開始され緩徐に4 mg/日まで増量された.その結果上記の症状の改善が認められた.リスペリドン4 mg/日投与開始1年後から,顎口腔部の不随運動や眼瞼痙攣,光過敏症,開口障害,顎の痛み,構音障害などの症状が出現した.これらの症状からメージュ症候群と診断された.抗精神病薬がリスペリドンからパリペリドン 6 mg/日へと変更となった.その結果,瞬目,光過敏症,顎の痛み,開口障害は徐々に改善した.しかし,構音障害は持続した.パリペリドンに変更6ヶ月後にはこの患者のメージュ症候群の症状は完全に治癒した.患者は現在パリペリドン12 mg/日で精神症状の再燃もなく統合失調症の寛解状態を維持している.本症例はリスペリドンでメージュ症候群が生じた場合には,パリペリドンへの変更により改善する可能性を示唆している.しかし,その機序に関しては不明である.
著者
堀 輝 吉村 玲児 香月 あすか 阿竹 聖和 中村 純
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.218-222, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
31

近年,うつ病における認知機能障害が注目されている。うつ病における認知機能障害は治療反応性や再発・再燃の予測因子となる可能性,寛解後の社会復帰に影響を与える重要な因子の一つである可能性など臨床的な分野での関心も高まりつつある。うつ病における認知機能障害は,病相期によって機能レベルは大きく変化するものの,寛解状態であっても認知機能障害が残存することが繰り返し報告されている。また認知機能障害のパターンが抗うつ薬などの治療反応予測に使える可能性についても複数の報告がある。さらに治療薬である抗うつ薬の一部には薬剤誘発性の認知機能障害をきたす可能性があるため注意が必要である。近年は勤労者うつ病の社会復帰や就労継続予測因子としての認知機能障害が注目されている。しかしながら,まだまだ良質な研究が少なく今後の研究結果が待たれる状況である。