著者
小杉 憲吾 阿部 伸一 井出 吉信
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.67-78, 2000-02-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

オトガイ神経の走行形態を立体的に保存し観察するため, シリコン含浸標本を作製した。試料として東京歯科大学解剖学教室所蔵10%ホルマリン固定成人遺体24体45側を用いた。オトガイ神経の断端より末梢側に向かい剖出し, 口角枝, 下唇枝, オトガイ枝の走行の観察, 分類を行ったところ以下の結果を得た。口角枝は, オトガイ孔より出現後ただちに口角部の皮膚または粘膜に停止するもの (I型) と下唇内に侵入し下唇外側粘膜下を彎曲して走行するもの (II型) に大別された。下唇枝は, オトガイ孔より下唇正中に向かい斜走するもの (I型) とその上外方を軽度に彎曲して走行するもの (II型) に分かれた。オトガイ枝は, オトガイ孔より横走しオトガイ部に停止するもの (I型) と正中付近にて下唇方向に転じ上方に向かうもの (II型) が認められた。これらの分布領域および走行方向を検討したところ, 分布密度が低く安全性が高い部位が示唆された。