著者
阿部 保子
出版者
北海道大学留学生センター
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-12, 1998-12

思考動詞「思う・考える」等は、一人称主語の文中、ル形で主語の現在の思考、すなはち発話時を表す。それは、発話時で話者の内的思考を認識できるのは、話者以外にはいないからである。発話時を基準として、発話行為と思考行為とが別々の人によって行なわれ、話者は他者の思考を直接認識することができない二・三人称主語の文では、思考動詞の語彙的意味が変化する。この場合、思考動詞は「食べる・見る・読む・蹴る」等の動作性動詞に、意味上近づく。思考動詞の意味上の変化が原因となって、二・三人称主語の文で発話時を示すには、「思っている・考えている」等のテイル形になる。本稿では、思考動詞の意味上の変化がル形とテイル形というアスペクト対立を無くすことを、またなぜ動作性動詞に近づくかを明らかにしたい。日本語教育の場でも、「思う」の語彙的意味の変化を使って、三人称主語と「思っている」の関連を説明することができる。本稿では、「ラオさんは明日晴れると思う」の誤用例を図を用いて説明した。
著者
阿部 保子
出版者
北海道大学留学生センター = Hokkaido University International Student Center
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-12, 1998-12

思考動詞「思う・考える」等は、一人称主語の文中、ル形で主語の現在の思考、すなはち発話時を表す。それは、発話時で話者の内的思考を認識できるのは、話者以外にはいないからである。発話時を基準として、発話行為と思考行為とが別々の人によって行なわれ、話者は他者の思考を直接認識することができない二・三人称主語の文では、思考動詞の語彙的意味が変化する。この場合、思考動詞は「食べる・見る・読む・蹴る」等の動作性動詞に、意味上近づく。思考動詞の意味上の変化が原因となって、二・三人称主語の文で発話時を示すには、「思っている・考えている」等のテイル形になる。本稿では、思考動詞の意味上の変化がル形とテイル形というアスペクト対立を無くすことを、またなぜ動作性動詞に近づくかを明らかにしたい。日本語教育の場でも、「思う」の語彙的意味の変化を使って、三人称主語と「思っている」の関連を説明することができる。本稿では、「ラオさんは明日晴れると思う」の誤用例を図を用いて説明した。The purpose of this study is to identify the differences between the "teiru" and "ru" forms of verbs of thinking, omou/kangaeru/shinjiru/wakaru, used in first-person vs second- or third-person subject sentences. In first-person subject sentences, where the speaker is the thinking person, "ru" forms are commonly used. In second- or third-person subject sentences (except question sentences), where the speaker is not the thinking person, the verbs change their meaning and behave similarly to action verbs such as "taberu/miru/yomu/keru" etc. With action verbs, the "ru" form does not refer to the time of speaking; this is done by the "te iru" form. The "te iru" form of thinking verbs, in second- or third-person subject sentences, similarly refers to the time of speaking. This difference leads to the use of the "te iru" form in sentences like "Rao-san wa ashita ame da to omotte iru".