著者
阿部 教恩 星野 仁 壹岐 伸彦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.493-499, 2015-07-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
25
被引用文献数
2

チアカリックス[4]アレーン-p-テトラスルホン酸(TCAS)は,pH 6.5付近の水溶液中でTb(III)とほとんど錯形成しないが,TCASの架橋硫黄と親和性の高いCd(II)を加えると,自発的にCd2Tb2(TCAS)2錯体を形成しエネルギー移動発光を示す.そこで本錯体の形成を用いCd(II)の発光定量法を開発した.Cd(II)の検出限界(S/N=3)は2.08 nM(0.23 ppb)という良好な値であった.さらに,本法を米試料中Cd定量へ適用した.酸分解後の米試料に含まれるリン酸イオンはキレートディスクによって除去,また,Cu(II)はイミノ二酢酸によってマスキングし,妨害を除去した.前処理,定量操作を行ったときのCd検出限界は,1 gの米試料を分解して本操作を施したとすると米中12.2 ppbのCdに相当する.これは国内基準値0.4 ppmと比べ十分に低い値である.実際に,認証値(Cd: 0.548 ppm)付きの米標準試料を測定したところ0.564 ppmという良好な結果が得られた.