著者
田中 麻理 伊藤 裕之 押切 甲子郎 安徳 進一 阿部 眞理子 竹内 雄一郎 三船 瑞夫 当金 美智子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.193-198, 2012 (Released:2012-04-24)
参考文献数
11
被引用文献数
5

2型糖尿病患者708例を対象に,一年間の直接医療費として,外来医療費を算出した.外来医療費は,平均で38.8万円/年であり,年齢,糖尿病の罹病年数とともに増加した.非薬物療法群で18.7万円/年,経口薬群で30.9万円/年,インスリン群で57.5万円/年であった.細小血管症,大血管症については,合併群では非合併群に比し,外来医療費が高額であった.動脈硬化の危険因子として,高血圧症,高LDL-C血症,肥満,CKDステージ3期以降を挙げた場合,保有数の増加に伴い外来医療費も上昇した.重回帰分析では,これら4つのうち,CKDステージ3期以降と高血圧が,外来医療費の有意な説明因子であった.2型糖尿病の外来医療費には,年齢,罹病期間,治療内容や血管合併症,動脈硬化の危険因子などが関係する.加えて,eGFRの低下や動脈硬化のサロゲートマーカーが異常を示す場合は,積極的な検索による合併症予防が,将来的な医療費抑制につながる可能性がある.
著者
阿部 眞理子 伊藤 裕之 尾本 貴志 篠﨑 正浩 西尾 真也 安徳 進一 三船 瑞夫 当金 美智子 新海 泰久
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.843-847, 2014-11-30 (Released:2014-12-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は71歳女性.40歳で糖尿病と診断され,近医で経口血糖降下薬による治療を受けていたが血糖コントロールは不良で,2014年4月よりイプラグリフロジン50 mgが追加された.以後,強い口渇を自覚し,投与後9日目に小脳・脳幹梗塞を発症して入院した.血糖値は219 mg/dl, HbA1c 9.8 %であり,ヘモグロビン13.4 g/dl(3月には,11.0 g/dl),ヘマトクリット40.6 %(同35.3 %)より,脱水が示唆された.心電図では虚血所見があり,ABIは0.85/0.76と低値で,超音波検査で両側の前脛骨~後脛骨動脈に狭窄・閉塞がみられた.同薬を中止し,エダラボンと濃グリセリンの投与,インスリン治療を行い,軽快退院した.本例は高齢,非肥満,利尿薬併用の糖尿病で,脱水により脳梗塞を発症したと推察された.同薬の投与前に,動脈硬化のスクリーニングを行うことが望ましい.
著者
柴田 幸子 伊藤 裕之 山本 梓 行田 佳織 尾本 貴志 篠崎 正浩 西尾 真也 阿部 眞理子 当金 美智子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.885-892, 2014-12-30 (Released:2015-01-14)
参考文献数
31

分割食で栄養指導を行ったのちに持続血糖測定(CGM)を施行した妊娠糖尿病44例(32±4歳,妊娠週数:24±5週)を対象とし,血糖,ケトン尿に影響する因子を検討した.摂取熱量と栄養素はCGM時に行なった食事記録より算出した.指示熱量に対する摂取熱量比は88±17 %であった.摂取熱量中の糖質の比率は46±10 %で,60 %以上の糖質過剰摂取は13例(30 %)にみられた.蛋白質,脂質の摂取熱量比率は17±3 %と37±9 %であった.CGMで高血糖を示した例は14例(32 %)で,高血糖の無かった群に比し,糖質の過剰摂取例が有意に高頻度であった(64 % vs. 13 %).栄養指導後にケトン尿を呈した6例においては,指示に対する摂取熱量比(69±10 %)が,ケトン尿を示さなかった例(91±17 %)に比し有意に低値であった.妊娠糖尿病の栄養指導に際しては,摂取熱量のみならず糖質への配慮が重要と思われた.