著者
外山 恵里 関 ゆかり 高橋 里佳 梅原 郁美 若山 曉美 七部 史 阿部 考助 下村 嘉一
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.213-218, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

【目的】アトロピン硫酸塩点眼薬(以下アトロピン)による屈折検査は弱視や斜視の治療に不可欠な検査であるが、副作用の発現が報告され注意が必要である。今回アトロピンによる副作用の発現率と症状について検討した。【対象及び方法】対象は2008年4月から2011年3月の3年間に屈折検査のためアトロピンを点眼した387例とした。初めて点眼した症例は387例中326例(84.2%)、2回目以上の症例は61例(15.8%)であった。点眼薬の濃度は3歳未満が0.5%、3歳以上は1%を基準とし、1日2回7日間行った。処方時に点眼による作用と副作用、点眼時の涙嚢部圧迫の必要性を説明した。副作用については発現率、発現時期、症状、濃度や年齢、他の疾患の合併の影響について検討した。【結果】初めて点眼した症例の副作用の発現は18例(5.5%)、このうち7例が点眼を中止した。症状は発熱が最も多く、点眼開始4日以内の発現が多かった。発熱や顔面紅潮は7月と8月の発現が他の期間より有意に高かった。副作用が発現した症例に他の疾患の合併はなかった。濃度別の副作用の発現は、0.5%は212例中12例(5.7%)、1%は114例中6例(5.3%)で有意な差はなかった(p>0.05)。年齢、性別による副作用の発現も有意な差はなかった(p>0.05)。2回目以上の症例の副作用の発現は61例中1例(1.6%)であった。【結論】アトロピンによる副作用の発現率は5.5%で、症状は発熱が多く、点眼薬の濃度、年齢、性別による影響はなかった。
著者
若山 曉美 松本 長太 大牟禮 和代 松本 富美子 阿部 考助 田中 寛子 大鳥 利文 下村 嘉一
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.7-18, 2011 (Released:2012-02-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

両眼から得られた外界の視覚情報は、視覚野で統合され両眼の相互作用によって処理される。この働きについて検討することはヒトが両眼視下でどのように外界の視覚情報を処理しているかを知ることにつながる。本研究では両眼の相互作用である両眼加重に着目し、過去10年間に検討した正常成人における両眼加重の働き、さらに弱視や視野異常を伴う症例での両眼加重について述べる。 両眼加重の評価は、自動視野計Octopus 201、101、900の3種類の視野計を用い両眼刺激装置や両眼固視監視カメラを組み込むなど独自に開発して行った。また両眼からの視覚情報を収斂したことによる働きであるかは確率加重を超えているか検討した上で評価した。 両眼加重は、視標サイズ、網膜部位、認知課題による影響を受け、視標サイズは小さいほど、網膜部位では中心窩から偏心するほど、さらに認知課題では検出閾値よりも認知閾値で大きくなった。さらに閾上刺激を用いた反応時間についての検討では両眼の反応時間は単眼よりも短く、閾値で検討した両眼加重の結果と同様に視標サイズや網膜部位による影響を受けた。 以上の基礎的研究データから単眼で知覚困難な条件において両眼加重を働かせることによってより有効的に視覚情報を処理していると考える。さらに弱視や視野異常を伴う症例では明らかな両眼加重を認めず、正常成人とは異なる両眼での働きを示した。