著者
若山 曉美 松本 長太 大牟禮 和代 松本 富美子 阿部 考助 田中 寛子 大鳥 利文 下村 嘉一
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.7-18, 2011 (Released:2012-02-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

両眼から得られた外界の視覚情報は、視覚野で統合され両眼の相互作用によって処理される。この働きについて検討することはヒトが両眼視下でどのように外界の視覚情報を処理しているかを知ることにつながる。本研究では両眼の相互作用である両眼加重に着目し、過去10年間に検討した正常成人における両眼加重の働き、さらに弱視や視野異常を伴う症例での両眼加重について述べる。 両眼加重の評価は、自動視野計Octopus 201、101、900の3種類の視野計を用い両眼刺激装置や両眼固視監視カメラを組み込むなど独自に開発して行った。また両眼からの視覚情報を収斂したことによる働きであるかは確率加重を超えているか検討した上で評価した。 両眼加重は、視標サイズ、網膜部位、認知課題による影響を受け、視標サイズは小さいほど、網膜部位では中心窩から偏心するほど、さらに認知課題では検出閾値よりも認知閾値で大きくなった。さらに閾上刺激を用いた反応時間についての検討では両眼の反応時間は単眼よりも短く、閾値で検討した両眼加重の結果と同様に視標サイズや網膜部位による影響を受けた。 以上の基礎的研究データから単眼で知覚困難な条件において両眼加重を働かせることによってより有効的に視覚情報を処理していると考える。さらに弱視や視野異常を伴う症例では明らかな両眼加重を認めず、正常成人とは異なる両眼での働きを示した。
著者
松本 長太
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-7, 2002-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
14

視野検査は、緑内障をはじめとする各種眼疾患の診断、経過観察において欠かすことのできない重要な視機能検査である。近年では、自動視野計の普及により誰でも容易に視野検査が行えるようになった。視野検査は視覚の感度分布を定量的に評価することであり、これには視覚系の様々な生理学的特性が影響する。自動視野計を用いた静的視野測定においても、従来から標準的な測定条件として設定されている視標サイズ、視標呈示時間、背景輝度は、視覚系における様々な生理学的特性を基に視野測定に適していると考えられる条件に設定されている。さらに近年では緑内障などの早期視機能障害を評価するために、Frequency doubling technique (FDT), FIicker perimetry, Blue on yellow perimetryなど従来の明度識別視野とは異なった特殊な検査視標を用いた視野検査法も日常診療に普及しつつある。これら特殊な視野検査法はM-cell系の評価、K-cell系の評価など視覚情報処理におけるより選択的な機能を評価することを目的としている。日常診療において視野検査を行いその測定結果を判断する場合、単に自動視野計の検査員として検査を進めるのではなく、これら視覚の生理学的特性を十分理解して検査に臨むことは、適切な視野測定の施行、測定結果の正しい評価において大変重要なことである。
著者
松本 長太
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-17, 1989-03-25
被引用文献数
6

The physiological character of the pericentral visual field near the fixation point is not so well understood as in the central 30° visual field. In this paper a report is made on the influences of stimulus size and background illumination on the sensitivity of this area studied in normal subjects and patients with several eye diseases. According to the SARGON program of the automated perimeter Octopus 201,49 test points on a 2° grid in the pericentral area were tested in normal subjects. These test points were examined under the conditions of stimulus sizes 1,3 and 5 (the visual angles of 0.108°, 0.431° and 1.724°) and under the background luminances of 0.4,4 and 31.5 asb. In the normal subjects the sensitivity curve of this pericentral area was rather flat when large stimulus sizes were used. But within the range from 0.4 to 31.5 asb the background illumination did not affect the sensitivity curve of this area so remarkably as the stimulus size. Differential light sensitivity decreased with age and its decrease was more evident under the condition of smaller stimulus sizes. The influence of stimulus size of this area was then studied in patients with several eye diseases. In many of the patients with optic neuritis, chiasmal syndrome and optic tract diseases, the stimulus size 1 was more sensitive in detecting pericentral scotoma and hemianoptic changes than the standard stimulus size 3. Thus the present results suggested that a small static target such as the stimulus size 1 should be used to examine the pericentral visual field abnormalities in neuro-ophthalmological cases.