著者
高橋 行継 佐藤 泰史 前原 宏 阿部 邑美
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.253-260, 2004-09-05
被引用文献数
10

群馬県では水稲の出芽方法として無加温積み重ね出芽法,その後の育苗にプール育苗法が広く用いられている.この出芽方法は,播種作業から出芽後の育苗箱展開までに育苗箱の移動が数回必要となり,多くの労力が必要である.栃木県で開発された平置き出芽法は,播種作業を育苗場所で実施し,積み重ねを行わずにそのまま出芽,育苗する方法である.このため大幅な労力軽減が可能である.しかし,本技術は主として栃木県における4月播種のハウス内育苗条件で開発されたものであり,プール育苗もほとんど取り入れられていない.そこで,群馬県での水稲の普通期栽培(6月中下旬移植)の露地プール育苗における平置き出芽法の適用性について検討を行った.平置き出芽法における出芽時の被覆資材について7種類の材料を供試した.標準の無加温積み重ね出芽法に対し,いずれの資材も0〜3日程度の遅れで出芽させることが可能であった.無被覆では夜間の低温と覆土乾燥のため出芽が遅れやすく,被覆資材が必要であった.供試した7資材のうち,生育むらや高温障害,覆土の乾燥が少なく,緑化作業の省略も可能な3資材(パスライト,健苗シート,ダイオラッセル1600黒)が優れていることが明らかとなった.草丈の伸長や葉齢の進展がみられる場合もあるが,育苗完了時の生育は標準に対してほぼ同等で,実用可能であると判断した.