著者
陳 商ウック (2009) 陳 商[ウック] (2008)
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は、東京ドームで一般によく知られている膜構造物に導入されている膜張力の大きさを定量的に、二軸方向別々に、高い精度で測定でき、かつ現場で使用できる膜張力測定装置を完成した上、多様な膜構造物の張力を実際に測定することにより、膜構造物において、膜張力の維持管理の現状を把握し、張力の維持管理に適するシステムを提案することを目標としている。その二年目(平成21年度)の研究課題及び成果は、一年度目に完成した小型・軽量の膜張力測定装置を用い、竣工中および竣工後の、様々な形式の膜構造物を対象に膜張力測定を行うことにより、その膜面に設計通りの張力が導入されているか否か、また、経年変化によりどの程度の応力緩和が起きているのかを把握するのである。それに基づき、膜構造物の経年に伴って膜張力が設計どおりに維持・管理できるシステムの提案を目標とする。一年度目には膜張力測定装置が現場で容易に利用できるよう、可搬性や小型・軽量性を満足するコンパクトな装置を完成した。完成した小型・軽量の測定装置を現場で無理なく利用するため、実験室において測定装置の検証実験を行うことによりその精度を検証した。さらに、横浜国立大学内に建設された二重ETFE膜構造物の張力測定を行うほか、これまで行った実在する膜構造物の張力測定により、ほとんどの膜構造が設計通りの膜張力が導入されており、膜張力の維持管理が問題なく行われていることが分かった。これも本装置により、膜張力が定量的に、さらに精度良く測定できたことにより得られた結果である。今まで行われて来た膜張力の維持・管理は、その多くが膜構造物の点検者による目視、または手で触れることなどによる感触や勘に頼らざるを得なかったが、本膜張力測定装置の開発により、科学的ツールの現場提供が可能となった。