著者
松下 達彦 陳 夢夏 王 雪竹 陳 林柯
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.62-76, 2020-12-25 (Released:2022-12-26)
参考文献数
32

本研究では日中対照漢字語データベースを開発した。日本語の語彙における,漢語 (字音語) の日中両語の意味対応パタンを文化庁 (1978),三浦 (1984) を参考に6種類に分類した結果,頻度上位2万語のうち,50%が漢語で,漢語の70% (全体の35%) が同形語で,30% (全体の15%) が非同形語であること,同形語7,074語のうち,82% (全体の29%,漢語の58%) が同形同義で,18% (同形語の6語~5語に1語) が同形類義や同形異義といった要注意の語であること等が明らかになった。本データベースは語の検索などで直接利用できるほか,J-LEX (菅長・松下,2014) のような語彙頻度プロファイラーへの搭載によって,文章の語彙的負荷の母語別表示機能や,対象者母語別のリーダビリティ計算,中国語母語学習者にとっての要注意点を表示する機能への応用が期待される。
著者
陳 夢夏
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.176, pp.110-117, 2020-08-25 (Released:2022-08-26)
参考文献数
11

本稿では,中国語話者の読解活動における二字漢字語の理解にあたり,「漢字語のタイプ」と「ストラテジーの使用」の影響を総合的に検討した。口頭訳テストとフォローアップインタビューを用いて未習・既習別に調査した結果,以下のことが明らかとなった。(1) 未習の正答率は「SJO>OJO>NJO」であり,既習の正答率は「SJO>OJO≒NJO」である。(2) ストラテジーの内容は「語彙」「文脈」「統合」があり,ストラテジーの機能は「確認」「検証」「推測」がある。(3) 未習の場合のストラテジーの使用状況は漢字語のタイプと関係ないが,既習のほうは漢字語のタイプによって異なる。(4) 未習の場合の成否にも,既習の場合の成否にも,「SJO類,OJO類,NJO類」の影響が見られ,既習の場合はストラテジーの機能の影響も見られた。