著者
松下 達彦
出版者
日本語教育方法研究会
雑誌
日本語教育方法研究会誌
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.8-9, 2014-03-15

Text modification is essential to adjust the lexical level of texts for various purposes. This study describes how an online lexical analyzer of Japanese texts named J-LEX was developed. After putting a target Japanese text in the input window, J-LEX returns the lexical frequency profile (a table for the proportion of text coverage by vocabulary frequency level) and the analysis result window where words beyond the designated frequency level are highlighted in red. J-LEX is expected to facilitate and simplify the analysis of the lexical level and the lexical adjustment of texts.
著者
ボイクマン 総子 根本 愛子 松下 達彦
出版者
日本語教育方法研究会
雑誌
日本語教育方法研究会誌 (ISSN:18813968)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.2-3, 2019 (Released:2019-07-02)
参考文献数
5

A placement test (PT) should be administered to many test-takers simultaneously, simply, and in a short period of time. Additionally, its results should have high reliability. However, conventional speaking tests do not satisfy these conditions. To address this, we have developed STAR, Speaking Test of Active Reaction, along with two evaluation tools: a rubric and audio samples. Using these, five evaluators graded the performance of 32 test-takers. We found a high intraclass correlation coefficient and that the raters gave results consistent with one another. Time spent on evaluation was short— fewer than two minutes per test-taker. Therefore, we conclude that as a speaking test for PT, STAR has the necessary qualities of reliability, validity, and usefulness.
著者
松下 達彦 陳 夢夏 王 雪竹 陳 林柯
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.62-76, 2020-12-25 (Released:2022-12-26)
参考文献数
32

本研究では日中対照漢字語データベースを開発した。日本語の語彙における,漢語 (字音語) の日中両語の意味対応パタンを文化庁 (1978),三浦 (1984) を参考に6種類に分類した結果,頻度上位2万語のうち,50%が漢語で,漢語の70% (全体の35%) が同形語で,30% (全体の15%) が非同形語であること,同形語7,074語のうち,82% (全体の29%,漢語の58%) が同形同義で,18% (同形語の6語~5語に1語) が同形類義や同形異義といった要注意の語であること等が明らかになった。本データベースは語の検索などで直接利用できるほか,J-LEX (菅長・松下,2014) のような語彙頻度プロファイラーへの搭載によって,文章の語彙的負荷の母語別表示機能や,対象者母語別のリーダビリティ計算,中国語母語学習者にとっての要注意点を表示する機能への応用が期待される。
著者
ボイクマン 総子 根本 愛子 松下 達彦
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.175, pp.146-154, 2020-04-25 (Released:2022-04-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1

プレースメント用のスピーキングテストは,大勢が短時間で受験でき,判定が簡便で,信頼性や妥当性の高いテストが理想である。そこで,筆者らはテストタスクと,ルーブリックと音声サンプルによる判定ツールの開発に着手した。テストの信頼性や妥当性を検証するため,開発した判定ツールを用いて初級から上級の受験者32名の「断り」のタスク結果を日本語教師4名に判定してもらう実験を行った。判定結果は,プレースメント時の読解などの受容能力より産出能力を示す作文と,リスニング要素を含むSPOTとの相関が高かったことから基準関連妥当性を一定程度満たしていると言える。判定者間の一貫性や相関も高く,受験者1名あたりの判定時間が1~2分であったことからも,本タスクと判定ツールは,簡便で一定の信頼性も確保できていると言える。ただし,中級の判定は初級や上級より難しいことがうかがわれた。
著者
黒崎 亜美 松下 達彦
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.46-56, 2009 (Released:2017-04-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

会話や作文の語の産出には,意味理解のほか文脈や連語等の知識が必要な上,既知語彙の検索の過程を経ねばならず,理解と異なる能力が必要である。そこで,中上級の韓国語母語の日本語学習者を対象に語彙の自由想起の実験を行ない,以下の諸点を示した。①中上級の韓国語母語の日本語学習者は日本語母語話者に比べ高頻度のプロトタイプ的な語を使用し,低頻度語彙の産出が少ない。②中上級の韓国語母語の日本語学習者は,第一言語(韓国語)の語彙の自由産出において,第二言語(日本語)より低頻度の語彙を産出し,日本語母語話者の第一言語(日本語)と語彙頻度レベルに差はない。③中上級の韓国語母語の日本語学習者の自由想起の語彙産出は文法テストや制限付き産出確認テストの結果と相関はなく,語彙の自由産出の発達は制限付き産出の発達に比例しない。④制限付き産出ができた語を自由想起できない場合,その語と語義の一部が重なる語を,自由想起することがある。以上の結果から,自由発表語彙を増やすには,語彙を検索・使用する機会を多くすることが必要だと考える。
著者
松下 達彦 佐藤 尚子 笹尾 洋介 田島 ますみ 橋本 美香
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.139-153, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
33

本研究では「漢字変換テスト」(KCT)を開発し,「日本語を読むための語彙サイズテスト」(VSTRJ-50K)(田島ほか,2015;佐藤ほか,2017)と合わせて日本語L2学生を対象に実施した。日本国内の3大学における日本語L2学生では,中国語L1学生の推定理解語彙量が平均3万語以上なのに対し,非漢字圏出身学生は2万語に満たなかった。二つのテストの相関は高かったが,ラッシュ分析でVSTRJ-50Kの一次元性が低かったためL1グループ別にDIF分析したところ,各グループ内ではモデルへの適合度が増し,L1によって難度の異なる語が多く存在した。特に語種による違いは顕著であった。1語・1漢字あたりの平均学習時間を検証したところ,初級から中上級にかけて短くなっていき,上級から超上級にかけて再び長くなることが明らかになった。L1/L2の語彙力・漢字力を包括的に見たカリキュラム開発が必要である。
著者
根本 愛子 ボイクマン 総子 松下 達彦
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.1-16, 2020-12-25 (Released:2022-12-26)
参考文献数
19

本研究では,ボイクマンほか (2020) で開発されたプレースメントテストのための日本語スピーキングテストSTAR (Speaking Test of Active Reaction) の検証のため,非日本語教師30名による状況対応タスクのレベル判定実験を行った。その判定結果の分析から,STARは中級レベルの弁別力が不足している可能性があるものの,プレースメントテストとしての有用性 (信頼性,構成概念妥当性,実用性) は高いといえることがわかった。また,判定時のコメントを分析したところ,日本語の自然さ・流暢さは上級の特徴となること,レベル判定の観点は内容・テキストの型・対人配慮では中級前期と中級中期,文法は中級中期と中級後期を境にそれぞれ異なることがわかった。さらに,中級前期は初級レベルと比較され肯定的なコメントが多い一方,中級中期は上級レベルと比較され否定的なコメントが多くなっていることも明らかになった。
著者
三枝 令子 丸山 岳彦 松下 達彦 品川 なぎさ 稲田 朋晃 山元 一晃 石川 和信 小林 元 遠藤 織枝 庵 功雄
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.176, pp.33-47, 2020-08-25 (Released:2022-08-26)
参考文献数
16

執筆者らは,日本で医学教育を受け,最終的に日本の医師国家試験合格を目指す外国人学習者に効果的な支援を行うことを目的として,医学用語の調査研究並びに教材作成を進めている。一口に医学用語といっても,その範囲は多岐にわたるため,医学用語の効率的な学習を目指すならば,まず医学用語の網羅的な収集と体系的な分類が必要になる。そこで本研究では,医学用語の体系的な語彙リストを作成する準備段階として,医学書のテキストから医学書コーパスを構築し,27種類の診療分野に分けて,そこに含まれる語を収集・分類した。その上で,高頻度の助詞,接辞,動詞や,領域特徴度の高い名詞について,医学テキスト固有の特徴という観点から分析を行った。その結果,接辞や動詞において医学分野特有の語がみられた。また,名詞に関しては診療分野ごとに頻出語が異なることから,診療分野別に語彙リストを構築することが重要であることがわかった。
著者
庵 功雄 イ ヨンスク 松下 達彦 豊田 哲也 宮部 真由美 早川 杏子 田中 牧郎 ビアルケ 千咲 志賀 玲子 志村 ゆかり
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

令和元年度は、日本の公立中学校でのフィールドワークを通した教材開発の成果として、外国につながる生徒のための日本語総合教科書(初級版、初中級版)を刊行し、その概要と具体的なアプローチについて、口頭発表を行った。JSL児童生徒のための漢字シラバス開発に資するべく、中学校教科書コーパスから漢字の音訓使用率を算出し、文理教科書における漢字情報の使用傾向の対照分析を行い、論文による成果報告を行った。また、非漢字圏のJSL児童生徒あるいは成人日本語学習者の効果的な漢字字形学習方法を探るために、彼/彼女らの漢字字形認知の様相を明らかにする目的で、漢字の構造と構成要素を軸に初見漢字の再認実験と漢字要素分解調査を行い、口頭発表によって報告を行った。ろう児に対する日本語教育の実践を続ける一方、日本語と日本手話の対照研究を続け、口頭発表で報告した。日本語学習教材の自動生成方法について検討し、言語処理分野の機械学習モデル「Word2Vec」を用いた類義語を用いて、日本語能力テストの多肢選択問題を構築する手法を検討する一方、学術共通語彙知識の発達やその読解力との関係についての横断的調査を行った。さらに、学習者の語彙力測定のためにWebブラウザから語彙情報を収集するフレームワークを提案し、学習者が登録した語彙から関連語彙を「Word2Vec」を用いて推定し、日本語学習教材の自動構築に役立てる仕組みを検討した。「やさしい日本語」の理念の拡張について考究するとともに、講演、新聞や雑誌への寄稿などを通して、「やさしい日本語」の理念の地域社会への普及に努めた。
著者
岩下 真澄 石澤 徹 伊志嶺 安博 桜木 ともみ 松下 達彦
出版者
日本語教育方法研究会
雑誌
日本語教育方法研究会誌 (ISSN:18813968)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.64-65, 2014-03-15 (Released:2017-05-18)

We analyzed learners' feedback from a one-week trial of a newly-developed vocabulary learning application. This application, designed to help teach Japanese academic words for understanding university lectures, consists of exercises, where the learner answers target words after reading definitions. Results from a questionnaire survey showed that learners found the selection of target words and use of exercises to be good practice and an efficient use of time. On the other hand, they requested audio representation of the words. This will be considered for future improvements in order to develop a more autonomous and efficient learning environment.
著者
庵 功雄 イ ヨンスク 松下 達彦 森 篤嗣 川村 よし子 山本 和英 志村 ゆかり 早川 杏子 志賀 玲子 建石 始 中石 ゆうこ 宇佐美 洋 金田 智子 柳田 直美 三上 喜貴 湯川 高志 岩田 一成 松田 真希子 岡 典栄
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の成果は次の3点に要約される。第1点は公的文書の〈やさしい日本語〉への書き換えに関わる諸課題の解決、第2点は外国にルーツを持つ生徒に対する日本語教育に関する実証的な取り組みであり、第3点は各種メディアを通じた〈やさしい日本語〉の理念の普及活動である。第1点に関しては、横浜市との協働のもと、行政専門用語562語についての「定訳」を作成し、書き換えに際し有用な各種ツールとともにインターネット上で公開した。第2点に関しては、新しい文法シラバスを公刊する一方、JSL生徒向け総合日本語教科書の試行版を完成した。第3点に関しては、書籍、講演等を通して〈やさしい日本語〉に関する理念の普及に努めた。
著者
中條 清美 松下 達彦 小林 雄一郎 Anthony Laurence 濱田 彰 西垣 知佳子 水本 篤
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は,いつでもどこでもだれでも,教育用例文コーパスを使って,DDL(Data-Driven Learning,データ駆動型学習)が実施可能なように,教育用コーパス・検索ツール・教材を搭載したDDLオープンプラットフォームを開発し,その活用と普及を図ることを目的とする。具体的には,平成25‐28年度科研において開発した第Ⅰ期開発版のデータ駆動型英語学習支援サイトSCoRE(Sentence Corpus of Remedial English)に基づき,1)教育用例文コーパスの増強,2)検索ツールの高度化・軽量化,3)DDL実践・効果検証・DDL普及活動の3項目の研究を行い,成果を逐次,国内外に発信することである。平成29年度の研究実績について述べる。1) 教育用例文パラレルコーパスの増強:第Ⅰ期開発版の英語例文・日本語訳データの見直しを行い,例文の増補・改訂,および,インターフェースの改良を加えた第4次開発版SCoREを公開した。2) 検索ツールの高度化・軽量化:SCoREツールのひとつ,「適語補充問題」ツールのログ機能を強化し,教育利用の促進を図った。さらに,ユーザの利便性を考慮し,新たに携帯端末用検索ツール「m-SCoRE」を開発・公開した。3) DDL教材の開発・実践・効果検証:上記1),2)の教育現場への応用研究として,外国語学習者がDDLに取り組むための教材や効果検証テストを開発し,データ駆動型英語学習支援サイトSCoRE(http://www.score-corpus.org/)に収録した。当該サイトは,オープンプラットフォームであり,教師・研究者が自由に収録データをダウンロードできる。大学生および高専生を対象としたDDL指導実践授業の評価と教育効果の検証を行った。研究成果として,雑誌論文を5件公刊し,6件の学会発表を行った。
著者
齋藤 伸子 佐々木 倫子 松下 達彦 藤田ラウンド 幸世 安藤 節子 堀口 純子 佐々木 倫子 松下 達彦 宮副ウォン 裕子 安藤 節子 藤田ラウンド 幸世 堀口 純子
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

私立中規模大学における「自律学習を基盤とした個別対応型日本語授業」の実践を分析・考察することをとおして、「意識する→計画する(学習目標を決める→学習計画を立てる→評価方法を決める)→実行する→振り返る」という実践の流れがモデル化された。また、研究期間に行われた実践者グループによる振り返りや議論の成果として、「柔軟な意識をもった教師」の存在という要素の重要性も今後の検討課題として浮かび上がってきた