著者
田中 観自 陳 娜 坂井 信之 渡邊 克巳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.128, pp.7-10, 2013-07-13

本研究では、食器の材質・質感における感覚間統合が味覚に及ぼす影響を検討した。実験では、3種類の水が刺激として用いられ、木、ガラス、紙、プラスチックの4種類のコップにそれぞれ注がれた。実験参加者は、各コップに入った水を飲んだ後に味覚の評定が求められた。その結果、木のコップで水を飲んだ場合、他の食器に比べて美味しいと感じることが示唆され、また触覚モダリティを想起させる形容詞を用いた味覚評価の質問をしたときに、その評価が食器間で異なることが示された。同様に、ハムを刺激とした実験を行ったところ、材質・質感による味覚の評価の違いは見られなかった。これは、参加者がフォークを用いてハムを口に運んで食していたため、直接的に食器の材質・質感を経験しなかったことが理由として考えられる。本研究の結果をまとめると、視覚的だけではなく触覚的に食器の材質・質感を直接経験することで、味覚との感覚間統合がなされ、味覚評価が変容することが示唆された。