著者
小森 政嗣 城下 慧人 中村 航洋 小林 麻衣子 渡邊 克巳
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PH-002, 2021 (Released:2022-03-30)

ガウス過程選好学習(Gaussian process preference learning)と敵対的生成ネットワークの一種であるStyleGAN2を組み合わせた実験を行い,外集団構成員が有していると想定される顔特徴の可視化を試みた。日本の大学生116名が提供した顔画像を,Flickr-Faces-HQ(FFHQ)で学習したStyleGAN2の潜在表現に埋め込んだ。埋め込まれた潜在表現に対し主成分分析を行い8次元の顔部分空間を構築した。実験参加者に,この顔空間(±2SD)から生成された2つの画像をモニタに並べて提示し,「より巨人/阪神ファンらしい顔」を選択する課題をそれぞれ100試行行わせた。実験参加者は全て阪神ファンであった。選好結果をもとに顔特徴を巨人/阪神ファン顔らしさに変換する内的な効用関数の推定を行った。ガウス過程選好学習はガウス過程回帰にThurstoneモデルを組み込んだ手法である。すべての参加者の結果を平均した平均巨人/阪神ファン顔らしさ関数をそれぞれ算出し,これらの関数が最大値となった潜在表現から,阪神ファンが考える巨人・阪神ファンの顔を合成しその顔特徴と比較した。
著者
中村 航洋 浅野 正彦 渡邊 克巳 尾野 嘉邦
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.23, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

政治的意思決定や選挙行動は,政治家の掲げる公約や政策の内容だけでなく,有権者の偏見や政治家の容姿といった,政治とは直接的関連の薄い要因にも左右される。しかしながら,人々がどのような容姿を政治家としてふさわしいと感じ,なぜそれが政治的意思決定に影響を及ぼすのかは明らかにされていない。本研究では,逆相関法を用いた顔画像分類から,日本人が心のなかで想像する政治家の顔ステレオタイプを可視化し,政治家らしいと判断される顔の特性について明らかにすることを目的とした。実験では,2016年の参議院議員選挙候補者の平均顔にランダムノイズを付加した2枚の画像を生成し,実験参加者に「内閣総理大臣」あるいは「防衛大臣」にふさわしい顔つきの写真を繰り返し選択してもらう課題を実施した。参加者の画像分類を逆相関法により解析した結果,各大臣としてふさわしい男性顔および女性顔のステレオタイプを可視化することができた。
著者
渡邊 克巳 JOHANNSON Andres.Petter JOHANNSON Andres Petter
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

人間は時には自分の意図を正しく理解していないばかりか、自分の行動を説明するためのストーリーを「後付けで」構築する傾向がある。この現象を実験心理学的に調べることのできる「Choice Blindness(選択盲目)」現象の成立過程を調べるために、平成20年度はChoice Blindness現象が、購買行動のシミュレーション場面で、選択要因が明言されている場合にも起きるかを調べた。その結果、購入するもののポジティブな側面とネガティブな側面の一部を入れ替えても、それに気づく被験者は少ないことが分かった。さらには、それらの選択要因の重要度もすり替える事によって変化する可能性が明らかになった。この知見は、Choice Blindness現象が「全体的な印象」だけでなく「選択の明言的な要因」にも起きる事を示している。この結果は、国内外の学会でするとともに、いくつかの研究会でも紹介した。さらに本年度は「Choice Blindness」現象の解明に加えて、自己の発話中の情動とそのフィードバックの影響を調べる新しい実験パラダイムを考案し、情動理解における内的状態と外的条件の関係を調べる研究をスタートした。その結果、外的に操作された情動フィードバックが被験者の情動に影響を及ぼす可能性を示唆するデータを得た。以上の研究成果は、すでに国際学会などで発表しているが、今後の共同研究のなかで発展させていく予定である。
著者
田中 観自 陳 娜 坂井 信之 渡邊 克巳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.128, pp.7-10, 2013-07-13

本研究では、食器の材質・質感における感覚間統合が味覚に及ぼす影響を検討した。実験では、3種類の水が刺激として用いられ、木、ガラス、紙、プラスチックの4種類のコップにそれぞれ注がれた。実験参加者は、各コップに入った水を飲んだ後に味覚の評定が求められた。その結果、木のコップで水を飲んだ場合、他の食器に比べて美味しいと感じることが示唆され、また触覚モダリティを想起させる形容詞を用いた味覚評価の質問をしたときに、その評価が食器間で異なることが示された。同様に、ハムを刺激とした実験を行ったところ、材質・質感による味覚の評価の違いは見られなかった。これは、参加者がフォークを用いてハムを口に運んで食していたため、直接的に食器の材質・質感を経験しなかったことが理由として考えられる。本研究の結果をまとめると、視覚的だけではなく触覚的に食器の材質・質感を直接経験することで、味覚との感覚間統合がなされ、味覚評価が変容することが示唆された。
著者
佐々木 健 北村 美穂 倉田 啓一 渡邊 克巳
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

今日,情報システムには少なからずユーザとの音声対話機能が実装化されている.音声エージェントに対するユーザの愛着は,情報システムの利用を求める際に重要な役割を果たすと考えられる.本研究では,会話の丁寧さに着目し,丁寧さの異なる数種類の呼びかけ語が音声エージェントへの愛着形成にどのような影響をもたらすか検討した.実験参加者は,バーチャル運転システムを通して,丁寧な呼びかけ語 (『すみません』)と丁寧でない呼びかけ語 (『あのー』)を話す音声エージェントと会話し,それぞれのエージェントに対する印象を評価した.その結果,丁寧な呼びかけ語の『すみません』は「打ち解け感」と「控えめさ」の評価を高めたが,エージェントへの愛着を直接示す「好ましさ」にはほとんど影響がなかった.しかし一方で,「好ましさ」と「打ち解け感」,「控えめさ」の間に強い相関が見られたことから,呼びかけ語は「打ち解け感」,「控えめさ」を通じてエージェントへの「好ましさ」を変化させる可能性があると考えられる.本結果は,呼びかけ語の丁寧さを適切に選択して使用することによって,ユーザと音声エージェント間の愛着形成が促進される可能性を示唆する.
著者
渡邊 克巳
出版者
The Academic Association for Organizational Science
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.16-22, 2014-06-20 (Released:2014-10-03)
参考文献数
39

組織科学と脳科学は,人間の主観・客観両方の観点からの理解を必要としている点で共通している.本稿では,個人および組織の意思決定は,我々が主観的に感じているほど内的な理由に基づいているわけではなく,多くの部分が意識されない外部・状況・他者の存在によって強い影響を受けていることを示しながら,組織科学と脳科学の融合の方向性を探りたい.
著者
坪見 博之 渡邊 克巳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.23, 2011 (Released:2011-10-02)

日常生活において高次認知活動を遂行するためには、目標行動に必要な情報をアクティブに短時間記憶することが必要である。この記憶機能はワーキングメモリと言われるが、保持できる容量は物体3個程度であり、保持機能に厳しい制約がある。外界には目標行動に不必要な情報も存在するので、効率的な行動達成のためには、妨害情報を排除しながら現在必要な情報のみを保持するようコントロールすることが必要となる。本研究では、これらのワーキングメモリ機能の発達過程を横断的に検討した。その結果、保持に関するワーキングメモリ容量は10才で、コントロール機能は12才で、成人と同様にまで発達することが明らかになった。また、単純な保持ではなく、コントロール機能が高い児童ほど学業成績も高いという正の相関を持つことも示された。
著者
渡邊 克巳 廣瀬 通孝
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年の多感覚情報提示技術の進歩により、クロスモーダル知覚の研究は新たな局面を迎えつつある。特にクロスモーダル相互作用とその体験によって、感覚や知覚が変化するのみならず、より高次の身体知覚や情動などにも変化が起こり、その結果として行動や意思決定にも変化が現れることが明らかになってきた。本研究では、認知心理学におけるダイナミックな意思決定過程のモデルと行動変容の知見に、五感情報処理技術・VR(ヴァーチャルリアリティ)の分野の先端技術を応用することで、身体・認知能力を変化させるクロスモーダル人間拡張技術につながる知見の蓄積と高度化・体系化を行うことを大きな目的として研究進めている。2019年度(および2020への繰越案件)では、様々なVR環境におけるクロスモーダル知覚の変化を、特に身体感覚の変化、身体所有感の変化、さらにそのような変化にともなう感情の変化などに関する研究をすすめた。また行為主体感に関する研究に関しても、行為主体感が外界の知覚に及ぼす影響を調べる研究を行った。2018年度の研究は既に、査読付き論文として複数公刊したとともに、学会での発表も積極的に行った。
著者
嵯峨崎 天音 石井 辰典 渡邊 克巳
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.85-99, 2022-03-01 (Released:2022-03-15)
参考文献数
37

State authenticity is the subjective sense of being one’s true self in a particular situation (Lenton, Bruder, et al., 2013). Previous studies suggested that the current mood influenced state authenticity because the judgment of state authenticity was made heuristically via available information (i.e., mood). However, the results were not clear. We examined whether the mood manipulation with short movies would affect state authenticity. The results partially supported the hypotheses; participants in a positive mood reported a higher degree of true self and less self-alienation than those in a neutral mood. However, the negative mood had no consistent effect on state authenticity. These results suggest that the effect of mood on state authenticity is limited or more complex than previously thought and point to the necessity for further investigations.
著者
田中 観自 渡邊 克巳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

ギャンブル依存症は今や大きな社会問題となっているが,健常者がギャンブル依存に陥る過程は未だに不明な点が多い.本研究では,感情抑制が後のギャンブル課題時のリスク選択に及ぼす影響を検討した.実験では,お笑い動画を実験刺激として呈示し,健常な実験参加者を自由に視聴させる統制群と笑うことを我慢させる実験群に分類した.動画視聴後,参加者は複数のリスクを考慮しながらサイコロの出目を選択できるギャンブル課題を行った.各リスクの選択回数に対して,実験条件と複数の性格特性を含めたモデリングを行ったところ,自己抑制ができると自己評価している参加者は,実験条件に関わらず低リスクの選択をする傾向にある一方で,統制群は実験群に比べて,全体的に低リスクの選択をしていることが明らかとなった.つまり,健常者は感情抑制を受けることで,性格特性とは半ば独立した形で,ギャンブル課題時に低リスクを選択しなくなることが示唆された.
著者
中村 航洋 浅野 正彦 渡邊 克巳 尾野 嘉邦
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.23, 2021

<p>政治的意思決定や選挙行動は,政治家の掲げる公約や政策の内容だけでなく,有権者の偏見や政治家の容姿といった,政治とは直接的関連の薄い要因にも左右される。しかしながら,人々がどのような容姿を政治家としてふさわしいと感じ,なぜそれが政治的意思決定に影響を及ぼすのかは明らかにされていない。本研究では,逆相関法を用いた顔画像分類から,日本人が心のなかで想像する政治家の顔ステレオタイプを可視化し,政治家らしいと判断される顔の特性について明らかにすることを目的とした。実験では,2016年の参議院議員選挙候補者の平均顔にランダムノイズを付加した2枚の画像を生成し,実験参加者に「内閣総理大臣」あるいは「防衛大臣」にふさわしい顔つきの写真を繰り返し選択してもらう課題を実施した。参加者の画像分類を逆相関法により解析した結果,各大臣としてふさわしい男性顔および女性顔のステレオタイプを可視化することができた。</p><p></p>
著者
高橋 康介 三橋 秀男 村田 一仁 則枝 真 渡邊 克巳
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.261-268, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Nonverbal communications involving physical contact convey “Kansei” information that is difficult to express in verbal communications. In this study, we proposed a method to investigate “Kansei” information in nonverbal communications, and surveyed how people perceive nonverbal communication involving physical contact. In the psychological experiment using questionnaire, we presented various words describing tapping and patting actions with Japanese onomatopoeias and sound symbolic words expressing a concept or nuance that is difficult to verbalize explicitly. Participants first imaged the situation wherein they made communication with another person through the physical contact, and then evaluated the “Kansei” information of communications and rated them by adjectives. We found that onomatopoeias added a variety of impressions to communications with physical contact. We then applied factor analysis using adjective rating to extract a factor space of the communicative actions. For both tapping and patting motion, the first factor represented atmosphere of the behavior, and the second dimension represented activeness of the physical motions themselves. We then mapped the rating scores of desirability of the communication onto the factor spaces. The scores of the first and the second factors well predict in an additive way the desirability of communication for both actions, and the influence of the first factor was stronger than that of the second factor. These results suggest that the structure of factor space represents desirability of the communication regardless of actions. The proposed method may be useful and efficient to investigate the Kansei information, factor space, and their inter-relation, of nonverbal communications.
著者
有賀 敦紀 河原 純一郎 渡邊 克巳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第6回大会
巻号頁・発行日
pp.8, 2008 (Released:2008-11-10)

高速逐次視覚呈示した文字系列中に1000msの時間的な空白(中断)を挿入すると,中断直後で標的同定率が低下する(有賀・河原・渡邊,2007).この結果は,高速呈示状態に対して一旦調節された注意が,系列の中断によって初期状態に戻されたためであると考えられる.有賀らは,中断を挟む文字系列を一連のランダムドット系列に重ねて呈示すると,中断後も注意が維持されることを示した.本研究は,高速逐次系列の連続性の有無を操作し,注意の維持が系列の連続性に依存するのかを調べた.まず,文字系列とそれに重ねて呈示されるランダムドット系列が完全に同期していなくても,注意が維持されることを示した.しかし,中断期間のみにランダムドット系列を呈示すると,中断後の標的同定率は低下した.これらの結果は,注意を維持するためには中断の前後の系列が連続している必要があることを示唆している.
著者
小野 史典 岡 耕平 巖淵 守 中邑 賢龍 渡邊 克巳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.119, 2011 (Released:2011-10-02)

我々の感じる時間の長さは様々な要因によって実際よりも長く、もしくは短く感じられる。これまでの研究で朝と夕方で主観的時間の長さが異なることが知られている。しかしこの結果はあくまで実験室で得られたデータであり、実際の生活リズムを反映しているとは言いがたい。そこで本研究では携帯電話で実験できるよう、実験プログラムを組み込んだ専用アプリを開発することで、普段の生活の中で感じる時間の長さを調べた。実験では1時間に1度、アプリが自動で立ち上がり、実験協力者はストップウォッチ課題(3秒経過したと感じたらボタンを押す)を行った。実験の結果、時間帯によって作成時間の長さ(ストップボタンを押すまでの時間)に変動が見られた。特に正午と夕方の時間帯で作成時間が有意に短くなっていた。この結果は実験室で得られた知見とは異なり、我々の感じる時間の長さが食事や仕事などの生活リズムによって変動することが明らかになった。