著者
千田 哲資 陳 新民
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.68-76, 1975-12-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
32

インド・太平洋海区からは5種のヒメダイ属が知られており, そのうち側線鱗数が50前後のものはPristipomoides typus Bleeker1種のみとされていた.しかるに, 南支那海およびアンダマン海のヒメダイ属魚類のうち側線鱗数48~52の魚には別種と見做すべき2型があり, そのひとつはP.typusであり, 他はBleeker (1876~1877) 以来その異名同種とされてきたDay (1870) のMesoprion multidensに該当することが判った.後者を前者より区別する主要点は, 吻および頬部に黄色線がある, 頭頂部の虫食い状斑紋が横に走る (前者では縦), 眼下骨幅が大きい, 上下両顎の犬歯が大きい, 尾鰭上葉の延長がより若いうちにみられなくなる, 第一血管棘の横幅は基部より約3/5の点で急に狭くなる (前者では基部から尖端に向かって一様に横幅を減ずる), 第一尾椎骨の血道弓門は卵形である (前者では細長い三角形), などである.目本人研究者 (赤崎, 1965;篠原, 1966;久新・他, 1973) によりナガサキフエダイの和名で記載されている魚はP.multidensであり, 新たにP.typusの和名としてバラヒメダイを提唱する.目本では屡々ナガサキフエダイの学名としてP.arglyrogrammicus (Valenciennes) が採用されているが, 後者の模式標本の側線鱗数は, 58 (Sauvage, 1891) もしくは61 (パリ国立科学博物館Dr.Rouxによる) であり, 両者が同種である可能性はない.Schlegel (1842) が目本より報告したDiacope sparusが表記両種のいずれを指すかは明らかでない.