著者
陳 雯 CHEN Wen
出版者
筑波大学一般・応用言語学研究室
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
no.11, pp.20-45, 2018-12-21

Titone & Connine(1994b)によると、慣用句の認知処理においては様々な要因が影響を及ぼすため、慣用句の認知過程を解明するには慣用句選出の際に、それらの要因をできるだけ統一する必要がある。Titone & Connine(1994b)と Tabossi 他(2011)はそれぞれ英語慣用句とイタリア語慣用句を対象に、慣用句の親密度、構成性、予測性などの性質について調査を行い、慣用句の認知過程を研究する際の慣用句選出の基準となるデータを提供している。一方で、日本語慣用句を対象としたこのような研究は未だ見られない。本稿はTitone & Connine(1994b)や Tabossi 他(2011)を参考に、まず1140個の日本語動詞慣用句を対象に親密度調査を行った。次に、日本語母語話者の親密度判断に基づき、親密度が上位300の慣用句を対象に透明度調査と予測性調査を行った。最後に、親密度・透明度・予測性の相関関係について分析を行った。本稿の結果は、日本語慣用句を対象とする今後の実験研究のために、慣用句選出の際の参考となる親密度、透明度と予測性のデータを提供することができる。