著者
陳野 好之
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.369-374, 1975-11-25 (Released:2008-12-18)
参考文献数
22

1972年秋,カラスザンショウに発生した葉さび病菌Coleosporium xanthoxyli DIET. et P. SYD.の小生子を用いて数種のマツ属に人工接種を試み,クワマツ針葉で陽性の結果をえた。これによって従来不明であった本菌の異種寄生性が実験的に証明された。本菌の小生子はクロマツ針葉に感染後約2か月の潜伏期を経て幼若な柄子器を形成し,翌春3月下旬ごろ成熟して柄子を, 4月下旬~5月上旬銹に胞子をそれぞれ形成する。本菌の銹.夏胞子を用いた数種の中間寄主植物に対する人工接種によると,カラスザンショウにのみ陽性でサンショウ,フユザンショウおよびイヌザンショウでは陰性であった。カラスザンショウでは銹,夏胞子接種後約14日を経て夏胞子が約1か月を経て冬胞子が形成された。本菌は従来夏胞子および冬胞子のみが記載されていたが,本実験によって未記載の柄子と銹胞子の両世代を含めた全世代の生活史と銹胞子寄主範囲が明らかとなった。