著者
Kenth Gustafsson Antoine Durrbach Robert M. Seymour Andrew Pomiankowski 隈本 洋介
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.17, no.98, pp.285-294, 2005-11-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
48
被引用文献数
3 4

タンパク質や核酸と比べて、糖鎖は潜在的により大きな多様性を持つことができる。末端糖鎖の多様性は、バクテリアとヒトのように離れた種間にも、また同一種の中でも存在する。このような広い多様性が存在する理由については依然として不明である。この中には、多型性を示す糖鎖末端のグリコシレーションのうち最も良く知られた例であるABO式組織-血液型抗原がある。粘膜表面のABO抗原に対して各々の病原体が異なった結合性を示すことに着目して、感染症と血液型抗原との関係が多数報告されている。しかし、宿主の細胞と同様の組織-血液型抗原は、宿主によって決定される抗原としてウィルス上にも存在することがある。新たな宿主に侵入すると、ウィルスは自身の持つ組織-血液型抗原に特異的な自然抗体と遭遇するようである。これによってウィルスの直接的な中和が増強されるのみならず、ウィルスに対する特異的な免疫応答も増強されるものと我々は考えている。モデル化研究の際にこのような病原体との相互作用を考慮すると、ヒトの集団で特徴的に見られるABO血液型の頻度を2種類の選択圧によって説明することができ、さらに末端糖鎖の多型が進化してきた様式と原因を説明できる。
著者
Emma J McKenzie Yun-Peng Su Luisa Martinez-Pomares 隈本 洋介
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.14, no.79, pp.273-283, 2002-09-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
70
被引用文献数
10 10

マンノースレセプター (MR) は二種類のレクチン活性をもつ特徴的なバイファンクショナル分子である。N末端のシステインリッチ (CR) ドメインは内因性の酸性糖質を主に認識し、C型レクチンドメイン (CRD) は微生物などの表面糖鎖や、MRを介して体内から消失する分泌型の内因性糖タンパク質に結合する。本総説では、クリアランス (組織マクロファージ (Mφ) や洞様毛細血管の内皮に発現する場合)、抗原輸送 (樹状細胞(DC)上に発現する場合や可溶化型MRがリンパ組織へのターゲティングを介在する場合)、および細胞接着 (リンパ管内皮に発現する場合)におけるMRの役割を中心に、MRに関する生物学の最近の知見について取り上げる。