著者
磯部 健一 難波 正則 日下 隆 今井 正 河田 興
出版者
香川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

我々は3波長の近赤外光時間分解分光装置(TRS)を用いて、脳の吸収係数、散乱係数、ヘモグロビン濃度、ヘモグロビン酸素飽和度(SO2)を測定した。新生仔豚を用いた基礎的研究としてdifferential pathlength factor(DPF)に影響するヘモグロビンの酸素化状態の検討と新生児の脳におけるこれらパラメータの発達的変化を検討した。(1)新生仔豚低酸素負荷での脳の光学パラメータの基礎的研究吸入酸素濃度を100%から4%まで段階的に変化させて頭部内(12頭)、の平均光路長と動脈血(SaO2)および矢状静脈血酸素飽和度(SvO2)との関係をDPF=平均光路長/Dで検討した。761、795、835nmのDPFは,各々5.02±0.36(mean±SD),5.31±0.32,4.92±0.34であった。761nmと795nmのDPFとSaO2およびSvO2との間に有意な正の相関が認められ,DPFは脳内ヘモグロビンの酸素化状態によって影響を受けることが判明した。(2)未熟児・新生児における脳の光学パラメータおよび脳内ヘモグロビン酸素飽和度(SO2)と脳血液量(CBV)の測定対象は在胎25-41週の新生児19例。761、795、835nmのDPFは,各々4.9±0.52,5.02±0.53,4.64±0.46で,散乱係数は,各々6.30±1.30(mean±SD)、6.04±1.11、6.37±1.45/cmであった。CBVは2.2±0.6ml/100gで、phase-resolved spectroscopyによる報告と同様であった。SO2は,7.26±3.9%で、修正在胎週数との間に有意な負の相関を示した。これは脳の発達に伴う酸素消費量の増加によると考えられた。これらによってTRSはベッドサイドで簡便に脳の光学パラメータ、SO2、CBVをモニターできることが証明された。