著者
山口 朋禎 雪吹 周生 原 文男 櫛方 美文 上田 征夫 川並 汪一 黒木 伸一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Supplement4, pp.69-73, 1998-12-05 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

肥大型心筋症の臨床像の増悪に心筋梗塞発症が関与することが指摘されている.今回我々は急性心筋梗塞様心電図を呈し,剖検により病理学的検討を行いえた肥大型心筋症を経験したので,文献的考察を加えて報告する.【症例】41歳男性.以前より高血圧,心肥大を指摘されるも放置.歩行中失神発作をきたし近医へ搬送さる.心電図肢誘導およびV5~6に異常Q波ないしST上昇あり,急性心筋梗塞と診断され経静脈的血栓溶解療法施行さる.しかしその後心電図変化なく心筋逸脱酵素上昇せず,心室性不整脈出現のため当院CCUへ転送.入室後,持続性心室頻拍が頻発し,直流通電による停止を必要とした.心室頻拍の予防にはIb群,IV群抗不整脈薬は無効で,β-遮断薬静注のみ著効を示した.心エコーでは著明な左室肥大およびび漫性の左室低収縮が見られた.冠動脈造影は正常,左室腔内に圧較差なく,心筋生検で肥大型心筋症が疑われた.メトプロロールの内服を開始.ホルター心電図,運動負荷試験にて心室頻拍認めないため一旦退院.7日後に歩行中突然意識消失し当院に搬送さる.到着時心電図は心室細動を示し,電気的除細動無効で死亡.剖検にて著明な心肥大(880g),び漫性の線維化を認めた.組織学的には心筋の錯綜配列,高度の細胞間線維化,リンパ球浸潤の散在あり.心外膜側,筋層内冠動脈に有意狭窄なし.過去の健診時心電図は,4年前より今回と同様の所見を呈していた.