著者
霍 沁宇
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.162, pp.97-112, 2015 (Released:2017-12-26)
参考文献数
11

本稿は,2014年に都内の大学で行われた上級読解の授業及びそれによる学習者の読み方の意識変容プロセスに関する調査報告である。授業は,学習者の自己との対話,学習者同士の対話,教師を交えた全体の対話という「三つの対話」を用いて,正確な理解と批判的な読みという学術的文章を読むのに必要な読み方を身につけることを目的としたものである。調査では,22名の学習者へのインタビューデータを,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析し,彼らの読み方の意識変容プロセスを明らかにした。学習者は,授業の開始時期に【自分の読み方への固執】をしていた。授業では,【戸惑いと悩み】を感じながら,【努力と工夫】をし,【気づきと学び】が得られた。また,【授業スタイルの変化による相互作用の活性化】と【教室内外の活用及び達成感】を通して読み方が【より深く,より広く】変容していくことが明らかになった。