著者
高嶋 裕美子 池田 梓 辻 恵 露崎 悠 市川 和志 相田 典子 後藤 知英
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.264-268, 2018 (Released:2018-08-16)
参考文献数
12

【目的】軽微な頭部外傷後の脳梗塞症例の臨床, 画像的特徴, 特にmineralizing angiopathy (以下MA) との関連を検討する. 【方法】1980年4月から2016年11月までに脳梗塞の診断で当院に入院した患者の診療録を後方視的に調査し, 軽微な頭部外傷後の脳梗塞患者を対象に, 臨床, 画像的特徴について検討した. 【結果】動脈性脳梗塞と診断された119例のうち5例が軽微な頭部外傷後の発症であった. 発症年齢は10か月から11歳 (中央値は2歳9か月) で全例男児であった. 1例で無症状, 4例で左片麻痺を認め, 全例予後は良好であった. 頭部画像は4例は右側, 1例は左側の大脳基底核に梗塞像を認めた. 5例中, 麻痺を認めた4例にCTで穿通枝のMAと考えられる線状の高吸収域を認め, うち3例は両側に認めた. 11歳の症例では今回の梗塞像の対側基底核に陳旧性梗塞像を認めた. 【結論】軽微な頭部外傷後の基底核梗塞症例で高率に穿通枝にMAの合併を認めた. 脳梗塞の原因となるその他の因子は明らかとなっておらず, MAが軽微な頭部外傷後の脳梗塞と関係がある可能性が疑われる. 軽微な頭部外傷後脳梗塞は乳幼児の報告が多いが, 本検討の最高齢は11歳で既報より高かった. 乳幼児期以降にも軽微な頭部外傷後脳梗塞の発症があることや, 再発の可能性を考慮する必要があると考えられた.