著者
青山 晃治
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

Alzheimer病(AD)患者の脳内では、酸化ストレスの亢進と抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)の減少が報告されており、神経細胞内のGSHを増加させることはADの進行に対し抑制的に働くと考えられる。しかし、末梢投与されたGSHは血液脳関門を通過できないため有効な治療法となり得ない。本研究では、神経GSH産生を抑制するmicroRNA(miR-96-5p)に対し、そのinhibitor(miR-96-5p anti-miR)を経鼻投与することにより脳内GSH産生を促進し神経変性抑制効果を発揮するかどうかを明らかにすることが第一の目的である。まず、経鼻投与によるanti-miRの中枢移行性を確認するために、蛍光標識されたmiR-96-5p anti-miRをC57BL6マウスの鼻腔内に投与する実験を行った。経鼻投与3日後に採取した脳組織から海馬組織切片を作成し、miR-96-5p anti-miRの中枢移行性を共焦点蛍光顕微鏡下で確認したところ、海馬神経細胞層CA1~CA2にかけて蛍光が確認され、経鼻投与によるanti-miRの中枢神経(海馬)への移行性が示唆された。さらに、miR-96-5p anti-miRの経鼻投与による海馬GSH量の変化について、GSH蛍光標識であるCMFDAを用いて検討した。対照群には、生理食塩水およびscrambled anti-miRを同様に投与した。miR-96-5p anti-miR投与群においては、経鼻投与3日後に海馬神経細胞層のCMFDA蛍光シグナルの増強が確認された。この結果から、miR-96-5p anti-miRの経鼻投与により海馬GSH量は増加すると考えられた。現在、海馬サンプルを用いたHPLCによるGSH測定を行っているが、統計学的評価を行うためのサンプル数には至っていない。