- 著者
-
青木 勇二
- 出版者
- 東京都立大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1996
遷移金属人工格子系で発見された巨大磁気抵抗効果が、近年、幾つかの希土類元素を含んだ金属間化合物でも観測されることが明らかとなってきた。両者に類似性があることから、その起源として同じメカニズムが考えられていた。本研究では、人工格子系では事実上不可能であるが金属間化合物では有力な研究手段となりうる比熱測定により、その巨大磁気抵抗効果を調べた。本研究では、巨大磁気抵抗効果が観測される金属間化合物として、UNiGaを中心に調べた。この化合物では、磁場印加によりその積層状態が、反強磁性的→強磁性的と変化するメタ磁性転移において約90%もの大きな負の巨大磁気抵抗が観測される。このメカニズムが何なのかが重要な問題であり、これまでに以下の二つの提案がなされた。つまり、(ア)同様な巨大磁気抵抗が観測されている人工格子系で提案されているスピン依存散乱、(イ)反強磁性状態でのフェルミ面上のスーパーゾーンギャップの形成である。本研究における大きな発見は、この転移で電子比熱係数が強磁性相で10%ほど増大することを初めて見出したことである。この変化は、明白にフェルミ面が変化していることを意味しており、後者の機構の直接的な証拠である。さらに、極低温で核比熱を観測し、Ga原子の核の有効磁場を求めた。この磁場から、反強磁性相での磁気構造を裏付けた。さらに本研究を、Eu、Smの希土類を含む金属間化合物に適用した。(「研究発表」参照)さらにこの様なメタ磁性転移における熱物性研究のため、定量的な磁気熱量効果測定方法の開発を進めた。CeRu2Si2における試験的実験により、磁気エントロピーの磁場依存測定が可能であることを示した。