著者
青木 輝夫 青木 忠生 深堀 正志 内山 明博
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.595-614, 1999-04-25
被引用文献数
12

雪面及び大気上端(TOA)における波長別及び波長積分した積雪アルベドに対する大気の効果を調べた。そこでは空気分子、吸収気体、エアロゾル、雲による吸収と散乱の効果を、doubling and adding法とMie理論に基づいた大気 - 積雪系の多重散乱放射伝達モデルによって見積もった。波長別雪面アルベドは太陽天頂角が大きいとき、大気中の吸収気体によって大気がないときに比べて減少することが示された。その太陽天頂角依存性は波長0.5μm以下でレイリー散乱によって弱められ、ほとんどの波長でエアロゾル及び雲によって弱められた。水蒸気の豊富な大気は、太陽天頂角が大きいとき、水蒸気の吸収帯で波長別アルベドを減少させた。ところが近赤外域の下向きフラックスが水蒸気の吸収によって減少するため、波長積分したアルベドは数パーセント高くなった。エアロゾルは太陽天頂角が小さいとき波長積分した雪面アルベドを増加させ、太陽天頂角が大きいときには減少させた。しかし、エアロゾルは太陽天頂角が大きいときを除き、波長積分したプラネタリーアルベドを減少させた。光学的に厚い雲は太陽天頂角に依らず波長積分した雪面及びプラネタリーアルベドの両者を増加させた。太陽天頂角が小さいとき可視域では、雪面上における曇天時の下向きフラックスが晴天時のそれを上回り、また両者はさらに大気外日射フラックスを上回り得ることがわかった。この現象は雪面と大気(雲)の間の多重反射によって説明できる。しかし、雪面上における曇天時の全天日射量は、晴天時及びTOAにおけるそれらを上回ることはなかった。