著者
石島 英 セルバンド ナタニエル 宜野座 亮
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.467-478, 2006-06-30
参考文献数
18

北太平洋西部海域におけるバイナリー台風(相互作用しあう2つの台風を1組のシステムとみてBTSと略記する)の出現状況および特徴的経路モードの出現度数および出現背景について調べた.BTSは1年に約2回の割合で,5-11月に出現している.地理的には解析対象海域の中央部のブロックBにおけるE-W(東西方向)の初期相対位置から出現したケースが最も多かった.経路の特徴としては,BTS期間を通して相互に低気圧性回転・接近する経路(CAモード)が全体の約35%を占め,その中の約半数は併合したケースであった.前半の低気圧性回転・接近のあと高気圧性回転・離反に転じる経路(CADモード)は45%であった.相互に高気圧性回転を主とした経路(aCモード)は僅か10%であった.BTSを構成する2つの台風の強度は一般に不等であり,BTS期間平均の強い台風に対する弱い台風の強度比は0.64であった.強度およびサイズの不等性が経路モードの特性に影響する可能性を指摘した.
著者
近藤 純正
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.465-470, 1994
参考文献数
13
被引用文献数
4

東北地方の1993年夏は1913(大正2)年以来の80年ぶりの大冷夏であった.これは1991年6月のピナツボ火山の噴火と関係があると思われる.最近158年間の大規模火山噴火と冷夏,米の収量との関連から,概略50年ごとに起こる冷夏大凶作の頻発時代の存在を示した.現在は昭和末・平成初期大凶作の頻発時代にある.宮城県の江の島における海面水温と金華山における気温の年平均値は,互いに高い相関関係を持ちながら長期変動をしている.両者の長期変動にはジャンプ・アップとダウンを伴う傾向が見られる.最近の1980年以後,海面水温と気温は低温の状態が続いている.
著者
中村 尚 高薮 出
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.85-100, 1997-02-28
参考文献数
56
被引用文献数
7
著者
藤部 文昭
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.371-381, 2013-05-31
参考文献数
25

1909~2011年の人口動態統計資料を使って,暑熱による国内の年間死者数と夏季気温の変動を調べた.暑熱による死者数は,戦前から戦争直後まで年間200~300人程度で推移した後,1980年代にかけて減少したが,記録的猛暑になった1994年を契機にして急増し,戦前を上回る数になった.しかし,暑熱による死亡率は1994年以降も戦争前後も同程度であり,年齢層ごとに見ると戦前から現在まで一貫して高齢者の暑熱死亡率が高いことから,近年の暑熱死者数の増加の一因は人口の高齢化にあることが分かる.また,診断運用上の変化による見かけの増加も死者数の増加に寄与している可能性がある.一方,暑熱による年間の死者数・死亡率と夏季気温(7,8月平均気温)との間には,戦後の減少期と1990年代後半以降を除いて0.7~0.8の相関があり,夏季気温の変動1℃当たり暑熱死亡率は40~60%変化する.

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著者
木村 龍治
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.887-889, 2011-10-31
参考文献数
1
被引用文献数
2
著者
小西 達男
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.383-398, 2010
参考文献数
35

過去300年で最も強大とされる1828年シーボルト台風(子年の大風)について,古文書,シーボルトによる観測記録等を元に,災害の実態,原因,台風の勢力,高潮の状況を調べた.その結果,(1)佐賀藩の被害は,死者数が8,200~10,600人,負傷者数が8,900~11,600人,全壊家屋が35,000~42,000軒,半壊家屋が21,000軒程度である.佐賀藩の人口を36~37万人とすると死亡率は2~3%となる.また家屋数を8万軒とすると,建物の全壊率は約50%,全半壊率は75%程度となる.(2)北部九州での被害は,死者数が13,000~19,000人,全半壊家屋が120,000軒以上である.(3)台風は長崎県の西彼杵半島に土陸し,佐賀市北部を通って北部九州を縦断し,周防灘から山口県へ再上陸したものと思われる.中心気圧は935hPa程度,最大風速は55m/s程度と考えられる.(4)顕著な高潮被害が有明海,周防灘,福岡湾等で生じている.上の推定を基にした高潮数値シミュレーションによれば,それぞれの港湾で4.5m,3.5m,3mを超える最大潮位偏差となり,古文書による被害地域とよく一致する.(5)台風による高潮害の特徴は,類似のコース,勢力で九州北部を通過した台風9119号で観測された高潮とよく一致しており,台風経路の推定が妥当であること及びこのコースが北部九州地域にとって極めて危険であることがわかった.
著者
神田 敬 杉本 孝公 上野 健一 萩野谷 成徳 堀 晃浩 川島 儀英
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.241-250, 2008-04-29
参考文献数
13

プロ野球球場として有名な千葉マリンスタジアム(千葉県千葉市)では他球場に比べて強風が頻発する.本研究では,千葉アメダスデータを解析し,暖候期に卓越する強風の原因は,関東以北に位置する低気圧や寒冷前線通過時に吹き込む南西風が,粗度の小さい東京湾上から直接千葉市沿岸に侵入するためである事を特定した.また,現地観測により,海側から吹き込む風系は千葉アメダスと幕張で良く一致している事を確認した.次に,スタジアムのようなドーナッツ型の建築物周辺で発生する気流系の特徴を,大型風洞を利用した実験により明らかにした,作成したスタジアム模型の内部には明瞭な逆流が発生し,順流との境界およびスタジアム後面で乱れの大きな領域が発生した.逆流域の範囲は模型前方の粗度や屋根の高さに依存していた.現地観測により,スタジアム内では実際に逆流が発生している事を確認した.
著者
三角 幸夫
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.279-283, 2004-04-30
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
安田 朝明 遠峰 菊郎
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.171-186, 1998-03-31
参考文献数
13

飛行場における降雪の短時間予報のため、地上観測、東京タワーでの観測、筑波山の観測を用いて、関東地方の地上気温の分布、その時間変化、及び大気下層の気温の鉛直分布と降水形態の変化を調べた。その結果、地上と大気下層において雨と雪の混在する気温幅がほぼ一致することが認められた。さらに、事例解析から、地上で比較的に高温、低湿で降雪が始まることが多い場合(タイプ1)と、低温、高湿にならなければ降雪が始まらない場合(タイプ2)に分類した。タイプ1では地上気温が2℃になるとほとんどの降水は雪に変わるが、タイプ2では地上気温が2℃では雨が残ることも多く、地上気温が1℃にならないと降水の大部分が雪に変わりにくい。タイプ1の場合は、アメダスによる地上気温の高度分布によれば気温が0℃付近の高度幅の厚さが薄く、タイプ2の場合は降水量が多く、地上気温が0℃程度の高度幅の厚さが厚いことが確認できた。
著者
木村 龍治
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.957-961, 2012-10-31
参考文献数
8
被引用文献数
1