著者
青木 智広
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.575-584, 2016 (Released:2016-06-04)
参考文献数
43

縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBL)の標準治療は未確立である。我々は,本邦のPMBL患者の治療法別の治療成績と予後因子を明らかにするために,多施設共同後方視的研究を行い,345例の初発PMBL患者の解析を行った。初回化学療法として最も多く選択されていたのはR-CHOP療法(N=187)であった。R-CHOP療法の後に,地固め放射線療法を受けていない患者(N=123)の予後因子を解析すると,IPI高値と胸水・心嚢水の貯留が,全生存率(OS)に対する予後不良因子として抽出された[IPI: hazard ratio (HR), 4.23; 95% confidence interval (CI), 1.48~12.13; P=0.007; effusion: HR, 4.93; 95% CI, 1.37~17.69; P=0.015]。これらの予後因子を組み合わせると,どちらの予後不良因子ももたない患者は,全体の約半数を占めており,地固めRTなしでも,4年無増悪生存率87%, 4年OS95%と非常に良好な成績を示した。これらの予後因子は,Validation Studyで確認される必要はあるが,患者のリスクに応じた治療選択をすることにより,初発PMBL患者に最適な治療を提供できる可能性が示唆された。