- 著者
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青木 正美
須藤 雄介
宮本 実
- 出版者
- 日本毒性学会
- 雑誌
- 日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
- 巻号頁・発行日
- pp.P-183, 2017 (Released:2018-03-29)
血中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)は、肝障害のバイオマーカーとして使われているが、毒性試験では肝臓に病理組織学的変化がみられなくても上昇するケースがしばしば認められ、肝臓以外の由来を考慮する必要がある。しかし、毒性試験に使用される動物種の臓器・組織におけるこれらバイオマーカーの発現分布及びその分布の動物種差に関する情報は限られている。本研究では、ラット及びサルの全身諸臓器・組織におけるALT、AST及びGLDHの分布について、各酵素の活性値及びタンパク質発現量(ALT及びASTはアイソフォームとして)を含めて多角的に解析を行った。ALTは、イヌについても諸臓器・組織におけるタンパク質発現量を調べた。その結果、ASTはラット、サルともに肝臓特異性が低く、骨格筋、心臓、舌等の多くの臓器・組織に広く分布していた。GLDHは肝臓特異性が非常に高く、肝臓が最も主要な由来臓器であると考えられた。ALTは肝臓特異性が比較的高かったものの、種間でいくつかの興味深い相違が認められ、例えばラット小腸におけるALT1タンパク質及びALT活性はサルやイヌのそれらと比較して著明に高値を示しており、血中ALT活性上昇に寄与し得ると考えられた。このことは薬剤が消化管障害を惹起する場合に、同じく障害を受けても血中ALT活性が変動する種としない種が存在する可能性を示唆しており、検査結果を評価する際にはこれらの種差に十分留意する必要があると考えられた。本研究では、各動物種における肝逸脱酵素の詳しい臓器・組織分布が明らかになったとともに、血中の変動への影響が考えられる毒性評価上も重要な種差を見出した。これらの情報は、毒性試験における血液生化学的検査データをより正確に解釈することに貢献すると期待される。