著者
児玉 泰光 吉田 謙介 永井 孝宏 西川 敦 後藤 早苗 青木 美栄子 内山 正子 高木 律男
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.48-57, 2020-01-25 (Released:2020-07-22)
参考文献数
28
被引用文献数
1 2

歯科外来における抜歯に関連した経口抗菌薬について,歯科ICTによる抗菌薬適正使用支援プロブラム(ASP)の前後で調査した.2015年1月~2018年12月において,電子カルテを用いた後ろ向き調査から抜歯当日の経口抗菌薬処方(術後投与)を抽出し,経口抗菌薬投与の有無,種類,期間を検討した.対象期間の後半(2017年1月)から,ASPとして抗菌薬適正使用に関する設問を含むe-learningを実施し,同時に関連情報を歯科系全医療スタッフで共有した.対象期間の普通抜歯は12,225件で,前半68.1%(4110/6036),後半50.4%(3120/6189)で経口抗菌薬が処方されていた.下顎埋伏智歯抜歯は4,740件で,前半90.5%(2130/2354),後半60.3%(1419/2354)で経口抗菌薬が処方されていた.ガイドラインによると普通抜歯では抗菌薬投与不要,下顎埋伏智歯抜歯では術前投与が推奨されており,適正使用化傾向が確認された.また,経口抗菌薬の種類は,第三世代セフェム系が激減し,普通抜歯では2015年上半期86.9%であったのが2018年下半期には28.3%に,下顎埋伏智歯抜歯では2015年上半期87.4%であったのが2018年下半期には8.5%となった.歯科ICTが主導するASPが歯科外来での抜歯における経口抗菌薬の適正使用に寄与したと推察された.