著者
須崎 浩一 伊藤 伝 兼松 聡子
出版者
Japanese Society of Mycotoxicology
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.137-141, 2008-07-31
被引用文献数
1 3

果樹研究所内のリンゴ園から傷害を受けた果実を採集し,リンゴ青かび病菌<i>Penicillium expansum</i> の分離を試みた.その結果,果皮に裂開があり地面に落ちていた果実から青かび病菌を分離した.さらに国内の複数リンゴジュース工場においても,貯蔵中の原料果実から青かび病菌の分離される場合があった.次いで果実表面の傷の種類と発病との関係を調べた.その結果,果肉が露出するような大きな傷を与えた果実では全て発病した.人為的な付傷処理を行っていない果実においても接種により発病がみられ,腐敗は「つる割れ」,「果面の荒れ」および「果点」から始まっていた.また,リンゴ青かび病の防除技術について,生物農薬の利用および貯蔵法の改良を検討した.市販の複数の生物農薬において<i>Erwinia carotovora</i>製剤が本病に対して高い予防効果を示した.青かび病の発生抑制にはCA(controlled atmosphere)貯蔵が有効である.近年「鮮度保持フィルム」を用いてCA 貯蔵と同様な環境を再現するMA(modified atmosphere)包装が実用化されていることから,MA 包装により青かび病防除が可能かどうかを検討した.青かび病菌を接種したリンゴ果実を,鮮度保持フィルムを用いて作製した袋(以下,MA 袋)に収納し,一定期間放置後に生じた腐敗の大きさと腐敗中に蓄積したパツリン量を調べた.MA 袋に収納した果実では腐敗の進展が抑制されたとともにパツリンの蓄積も著しく抑制された.