著者
千葉 壮太郎 近藤 秀樹 兼松 聡子 鈴木 信弘
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.163-176, 2010-12-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
105
被引用文献数
4 4

マイコウイルス(菌類ウイルス)は菌類の主要な分類群から広く報告されている.特に近年のウイルス探索の結果,新しいマイコウイルスが次々と報告され,新規のウイルスゲノム構造,遺伝子発現様式,粒子構造の発見を齎した.また,同時にウイルスの多様性,進化の理解へと繋がった.マイコウイルスの多くは2本鎖RNAをゲノムにもつ球形ウイルスであるが,粒子化されない1本鎖RNAウイルスも多く見つかっている.自然界では,マイコウイルスは宿主菌の細胞分裂,細胞融合,胞子形成により水平・垂直伝搬するが,細胞外からの伝搬・侵入経路は知られていない.マイコウイルスの多くは無病徴感染をするが,一部のウイルスは宿主菌に病徴を惹起し,巨視的表現型の変化を齎す.マイコウイルスが植物病原菌の病原力を低下させる場合は,ウイルスを利用した生物防除(ヴァイロコントロールと提唱)が試みられている.ヨーロッパではクリ胴枯病菌のヴァイロコントロールの成功例があり,一方,日本でも果樹の白紋羽病菌を標的としたヴァイロコントロールが試みられている.本稿では,マイコウイルスの一般的性状を概説し,ヴァイロコントロール,さらにはそれに関係するウイルスについて紹介する.
著者
千葉 壮太郎 近藤 秀樹 兼松 聡子 鈴木 信弘
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.163-176, 2010-12-01
被引用文献数
4 2

マイコウイルス(菌類ウイルス)は菌類の主要な分類群から広く報告されている.特に近年のウイルス探索の結果,新しいマイコウイルスが次々と報告され,新規のウイルスゲノム構造,遺伝子発現様式,粒子構造の発見を齎した.また,同時にウイルスの多様性,進化の理解へと繋がった.マイコウイルスの多くは2本鎖RNAをゲノムにもつ球形ウイルスであるが,粒子化されない1本鎖RNAウイルスも多く見つかっている.自然界では,マイコウイルスは宿主菌の細胞分裂,細胞融合,胞子形成により水平・垂直伝搬するが,細胞外からの伝搬・侵入経路は知られていない.マイコウイルスの多くは無病徴感染をするが,一部のウイルスは宿主菌に病徴を惹起し,巨視的表現型の変化を齎す.マイコウイルスが植物病原菌の病原力を低下させる場合は,ウイルスを利用した生物防除(ヴァイロコントロールと提唱)が試みられている.ヨーロッパではクリ胴枯病菌のヴァイロコントロールの成功例があり,一方,日本でも果樹の白紋羽病菌を標的としたヴァイロコントロールが試みられている.本稿では,マイコウイルスの一般的性状を概説し,ヴァイロコントロール,さらにはそれに関係するウイルスについて紹介する.
著者
須崎 浩一 伊藤 伝 兼松 聡子
出版者
Japanese Society of Mycotoxicology
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.137-141, 2008-07-31
被引用文献数
1 3

果樹研究所内のリンゴ園から傷害を受けた果実を採集し,リンゴ青かび病菌<i>Penicillium expansum</i> の分離を試みた.その結果,果皮に裂開があり地面に落ちていた果実から青かび病菌を分離した.さらに国内の複数リンゴジュース工場においても,貯蔵中の原料果実から青かび病菌の分離される場合があった.次いで果実表面の傷の種類と発病との関係を調べた.その結果,果肉が露出するような大きな傷を与えた果実では全て発病した.人為的な付傷処理を行っていない果実においても接種により発病がみられ,腐敗は「つる割れ」,「果面の荒れ」および「果点」から始まっていた.また,リンゴ青かび病の防除技術について,生物農薬の利用および貯蔵法の改良を検討した.市販の複数の生物農薬において<i>Erwinia carotovora</i>製剤が本病に対して高い予防効果を示した.青かび病の発生抑制にはCA(controlled atmosphere)貯蔵が有効である.近年「鮮度保持フィルム」を用いてCA 貯蔵と同様な環境を再現するMA(modified atmosphere)包装が実用化されていることから,MA 包装により青かび病防除が可能かどうかを検討した.青かび病菌を接種したリンゴ果実を,鮮度保持フィルムを用いて作製した袋(以下,MA 袋)に収納し,一定期間放置後に生じた腐敗の大きさと腐敗中に蓄積したパツリン量を調べた.MA 袋に収納した果実では腐敗の進展が抑制されたとともにパツリンの蓄積も著しく抑制された.