著者
須沢 利郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.1072-1075, 1960-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
4

羊毛繊維の酸性染料溶液におけるζポテンシァルより,繊維表面の染着量に見合う量として表面電荷密度を計算し,染着量との関係を調べた。解離基1個のorangeIIは解離基2個のorang II Rより大きい表面電荷密度および染着量を示し, ζ ポテンシァルより予測されたorange II R の染着量が, orange IIのそれの少なくとも1/2以下であるということが実証された。染料濃度の増加によって表面電荷密度および染着量の増加がみられた。またpHの小さい方が大きい方より表面電荷密度,染着量ともに大きい値を示し,酸性染料による羊毛染色の機構が裏付けされた。温度の上昇によって表面電荷密度は減少したが,染着量は増加した。さらに塩類による表面電荷密度および染着量の変化を調べ,その結果より塩類が酸性染料による羊毛染色において,繊維表面に及ぼす効果と,繊維内部をも含めた繊維全体に及ぼす効果とは若干異なることが示唆された。