著者
酒居 勇太 須藤 正彬 刑部 正博
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-6, 2012-05-25 (Released:2012-06-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3 5

ナミハダニが寄主葉の上面を産卵場所として利用しないことは,風雨や太陽光紫外線による卵への悪影響を回避するための適応だと考えられている.一方で葉面の表裏における栄養条件の違い,および上下の葉面において虫体に掛かる重力方向の違いが,ナミハダニの適応度に与える影響は十分に検討されていなかった.本研究ではインゲンマメのリーフディスク(単一葉面)を用い,その表裏および上下がナミハダニの産卵数に与える影響を評価した.葉表では葉裏よりも,下面では上面よりもそれぞれ産卵数が増加する傾向が支持された.しかし「葉表かつ上面」と「葉裏かつ下面」のリーフディスク間では,これら2因子の影響が打ち消し合い産卵数は拮抗した.すなわち葉面の栄養条件ないし重力方向について,単独でのボトムアップ効果は認められるものの,ナミハダニがインゲンマメ葉の上面(葉表)に卵を産まない理由にはならないと考えられた.