著者
池田 和彦 額田 敏秀 池田 研二
出版者
(財)東京都医学研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

3年研究の初年度、米国スタンレー財団精神疾患脳バンクより分与された疾患(統合失調症・双極性障害・大うつ病)・対照脳の前頭葉および側頭葉組織の遺伝子発現をDNAチップおよびTaqMan法でしらべたところ、ニューロペプチドY遺伝子の発現は、統合失調症(精神分裂病)の前頭葉で有意に減少していることを見いだした。次年度は、理研・加藤忠史氏との共同研究で同スタンレー試料前頭葉60検体について60個のDNAチップを用いて個別に比較検討し、統合失調症前頭葉でニューロペプチドY遺伝子の発現が低下することを確認した。ニューロペプチドY遺伝子の発現低下は、検索対象の年齢、性別、死後時間、服薬量とは関係しないことから、ニューロペプチドY遺伝子発現の低下が統合失調症の病態と関連している可能性が考えられた。そこで最終の本年度は、ニューロペプチトY遺伝子をターゲットとして、統合失調症患者と健常者に差がみとめられるかとうかをしらべた。ヒトのニューロペプチトY遺伝子の9カ所に1塩基置換の多型もみつけた。このうち7つはデータベースに存在しない新規のものであった。統合失調症群と健常者群のあいだでこれららの多型の出現頻度がことなるかどうかをしらべた。この結果、-485C>T多型は統合失調症の遺伝子リスクファクターであることか明らかになった。