著者
伊原 徳子 飛田 博順 宮澤 真一
出版者
Forestry and Forest Products Research Institute
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.207-216, 2022 (Released:2022-11-05)
参考文献数
33

二酸化炭素濃度によって発現が変動する遺伝子を明らかにするために、スギ針葉を用いてトランスクリプトーム解析を行った。得られたRNAリードのde novoアセンブリにより35,211の遺伝子配列が得られた。そのうち、113遺伝子が高CO2 、30遺伝子が低CO2 で高発現していた。推定された遺伝子の機能から、高CO2 と低CO2 では異なる分子経路の遺伝子発現が活性化されていることが示された。光合成や光呼吸の遺伝子の転写は大きく影響されなかったが、葉緑体にコードされる遺伝子の転写を制御する遺伝子の発現が低CO2 条件下で高くなっていた。検出された変動遺伝子の中に葉緑体に関連する機能を持つ遺伝子が多かったこととあわせ、葉緑体関連の遺伝子の転写調節がCO2 変化に対する初期応答の一つであることが示唆された。
著者
飛田 博順
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ハンノキ属樹種は放線菌のフランキアと根で共生し大気中の窒素を利用する窒素固定能力を持つ。1984年に発生した木曽御嶽山の岩屑流跡地に更新したハンノキ属数樹種の窒素固定能力を、窒素安定同位体比を用いた手法により評価した。その結果、植生の回復が早い低標高(約1100 m)に生育するケヤマハンノキが、高標高(約2000 m)のミヤマハンノキとヤハズハンノキに比べて窒素固定能力が低いこと、高標高の2樹種間では窒素固定能力に差がないことが明らかになった。撹乱後30年たった現在、植生回復に伴う土壌の肥沃化の影響があるものの、依然としてハンノキ属樹種の窒素固定能力が高く維持されていることが示唆された。