著者
飛田 篤子 吉本 照子
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.87-96, 2020-08

[要旨] 在宅終末期がん療養者(療養者)が他者との関係性の中で主体性を発揮していく過程を支える訪問看護モデル(モデル)の有用性・実用可能性の検証を目的とした。二つの研究で構成し,研究1では熟練訪問看護師10名の語りからモデル原案を作成し,終末期ケアに関する実践・研究実績を有する訪問看護師,研究教育者5名による専門家会議で精錬した。モデルは,療養者の主体性発揮の状況として「療養者の主体性発揮の変容過程」7局面,各局面の下位29項目,看護支援の手がかりとして「各局面での看護支援」の看護支援の目標(大項目)7項目,看護支援の下位目標(中項目)22項目,下位目標を達成するための思考と行動の例示(小項目)53項目で構成した。研究2ではモデルを試用して訪問看護師(看護師)が療養者を支援し,有用性と実用可能性を検証した。3つの訪問看護ステーションにおける自立して訪問看護を提供しうる看護師8名が,療養者4名を支援した。看護師は医療者の判断と異なる療養者の意思等に対し,療養者の言動から能動的に主体性発揮の状況を捉えるように変化し,療養者の主体性発揮を支持し,全療養者から協働者と認められた。全療養者の主体性発揮の局面の進展がみられ,治療や生活に対する意思を表出した。看護師はチーム内でのケア方針の統一,療養者とのコミュニケーションの促進等へのモデル活用の意思を示した。以上より,有用性,実用可能性があると判断した。