著者
吉永 亜子 吉本 照子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.70-77, 2007-05-20 (Released:2016-10-25)
参考文献数
38
被引用文献数
3

足浴は, 頭痛を軽減させ発汗を促進する看護技術として, 19世紀末に英米から導入され実践に適用されてきた. 本研究の目的は, 日本において足浴がどのように睡眠援助の看護技術に進展したかを, その背景要因とともに明らかにすることである. 1877年以降に出版された看護書や基礎看護学教科書など25文献における足浴や睡眠援助の記述内容, 各時代の看護制度, 看護教育, 睡眠に関する他分野の知見を調べた. 足浴技術の国内での進展とその背景要因は, ①看護師が患者の身体面の世話全般を担当したことより, 足の熱布清拭に睡眠効果があることを発見, ②熱布清拭や入浴の睡眠効果から類推して, 湯を用いた足浴の睡眠効果を発見, ③体の深部の体温を意図的に上昇あるいは下降させる足浴方法を, 実験により特定, ④睡眠は深部体温低下期にはじまると基礎医学分野で実証されたのをうけ, 足浴が睡眠をうながす機序と足浴方法を見直したこと, と考えられた.
著者
吉永 亜子 吉本 照子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.4-13, 2005-11-10 (Released:2016-10-25)
参考文献数
34
被引用文献数
5

足浴が, どの程度不眠患者の睡眠を促す効果をもつのか, どんな要因が効果に影響するのかを総括するために, 医学中央雑誌, Medline, Cinahlの全年オンライン検索や, 最新看護索引 (1990~2000), 研究報告書, 本, それらの引用文献より, 網羅的に足浴実践報告を集め, 睡眠との関連を報告していた 17件を分析した. 対象者10名以上の報告ではいずれも, 不眠患者の半数以上が足浴による睡眠状況の改善を認め, 入眠しやすさや, 眠りの深さ, 目覚めのよさ等の効果がみられた. 足浴によって皮膚温上昇 ・ 深部体温低下が起こることと, 深部体温低下期に睡眠が起こりやすいことは生理学実験で実証されており, 深部体温の低下が入眠を促し, 深部体温の変動の増幅が持続的な睡眠状況改善をもたらしたと考えられた. しかし, 足浴前の皮膚温が高い場合や, 室温が高い場合, 体の芯まで温めすぎた場合には効果が出にくくなり, これらは深部体温の変動上, 睡眠を阻害する要因と考えられた.
著者
水村 純子 吉本 照子 緒方 泰子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.150-158, 2014-04

目的:地域包括支援センター内でのケースカンファレンスが,多職種でケースの情報を共有し,支援の目標や方針を検討する場として機能していなかったことを背景とし,効果的・効率的なケースカンファレンスを実施することが課題であった.そこで,利用者に対する包括的ケアを行うために,職員各々の役割行動を規定したケースカンファレンス基準をつくることを目的とした.方法:センター長がリーダーとなり,看護師,社会福祉士,主任介護支援専門員を中心に社会福祉主事,介護支援専門員を加えた計6人の職員で基準試案を作成した.基準試案をもとに平成22年5月から8月にケースカンファレンスを実施し,職員の意見を反映させて基準試案を修正し,基準を完成させた.ケースカンファレンスの効果的・効率的な実施に向けて,事例選定,記録および評価に用いる書式を5種作成した.基準作成の目的とした効果的な包括的ケアの状況およびケースにおける基準使用の効果をもとに評価した.結果:作成した基準試案および5種のツールを使用しながら,全員がケースカンファレンスに参画し,ケースの情報,支援目標・方針を共有し,統一した支援をおこなうことができた.独居の看取りなど在宅生活の継続が困難であると予測された支援においても,各職種の意見を反映して支援目標を決め,ケースの情報,目標および支援方針を多職種で共有し,統一した方針で対応し,本人の意向に沿って在宅で看取れた.全員でその効果を評価し,同様なケースに関する今後の対応方法のルールを決めることができた.虐待支援の遅れもみられなくなった.結語:各職種の担当するケースの数の偏りを防ぎつつ専門性を発揮し,多職種協働による支援の必要なケースを効果的・効率的に選定し支援・評価できたと考えた.主担当を中心に多職種で支援を分担し,その効果を全員で評価・確認したことにより,各職員が多職種協働における専門職としての役割を自覚し,効果的な相互の役割行動を理解し,多職種協働の必要なケースの特性に応じた支援の実践知を共有できたと考えられた.制度創設4年目のセンターにおいて,多職種協働による包括的ケアを提供するには,各職員が専門職としての自己および他職種の役割を認識し,専門職として確実に協働できるようなツールの作成を含めた基準および実践の効果の共有が必要であり有効であったと考えられた.
著者
飛田 篤子 吉本 照子
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.87-96, 2020-08

[要旨] 在宅終末期がん療養者(療養者)が他者との関係性の中で主体性を発揮していく過程を支える訪問看護モデル(モデル)の有用性・実用可能性の検証を目的とした。二つの研究で構成し,研究1では熟練訪問看護師10名の語りからモデル原案を作成し,終末期ケアに関する実践・研究実績を有する訪問看護師,研究教育者5名による専門家会議で精錬した。モデルは,療養者の主体性発揮の状況として「療養者の主体性発揮の変容過程」7局面,各局面の下位29項目,看護支援の手がかりとして「各局面での看護支援」の看護支援の目標(大項目)7項目,看護支援の下位目標(中項目)22項目,下位目標を達成するための思考と行動の例示(小項目)53項目で構成した。研究2ではモデルを試用して訪問看護師(看護師)が療養者を支援し,有用性と実用可能性を検証した。3つの訪問看護ステーションにおける自立して訪問看護を提供しうる看護師8名が,療養者4名を支援した。看護師は医療者の判断と異なる療養者の意思等に対し,療養者の言動から能動的に主体性発揮の状況を捉えるように変化し,療養者の主体性発揮を支持し,全療養者から協働者と認められた。全療養者の主体性発揮の局面の進展がみられ,治療や生活に対する意思を表出した。看護師はチーム内でのケア方針の統一,療養者とのコミュニケーションの促進等へのモデル活用の意思を示した。以上より,有用性,実用可能性があると判断した。
著者
西開地 由美 吉本 照子
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 = Journal of Chiba Academy of Nursing Science (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.107-116, 2019-08-31

[要旨] 本研究の目的は,救急・集中治療領域の終末期患者の家族支援に困難感を有する看護師を支援し,家族支援を充実させるための看護管理者の働きかけを明らかにすることである。急性・重症患者看護専門看護師資格を有し,救急・集中治療領域の終末期患者の家族支援の充実に向けた看護管理実践を語れる看護管理経験者8名に半構造化個人面接調査を行い,質的帰納的に分析し,看護師が家族支援に困難感を有する状況に対する看護管理者の意図と行動を抽出した。看護師が困難感を有する状況として【医師・看護師・家族間で治療方針を合意形成できない状況】【終末期患者及びその家族へ看護を提供する意味が見出せない状況】【家族支援に関して支援環境が整っていない状況】等7項目,サブカテゴリー21項目を抽出した。看護管理者は各状況に対し〈医師と看護師が患者と家族にとって最善な治療や支援について考える機会をつくる〉〈看護師自身の価値観に目を向け,家族支援における使命や役割を看護として意味づける〉〈看護師が患者や家族のケアに専念できるようにする〉等30の働きかけを行っていた。救命を使命とする治療・ケアの場では,医療者と家族の合意形成が困難,終末期ケアに意味を見出せない,ケア環境が不適切等の状況があり,看護師が困難感を有すると考えられる。看護管理者は,こうした状況に対し,患者と家族にとって最善の治療方針を決めるように,医師と看護師,家族間の合意形成や救命と共に終末期患者の家族支援に関する看護師の役割遂行を促し,ケア環境を調整していたと考える。
著者
酒井 郁子 吉本 照子 杉田 由加里 山下 朱美 平井 愛山
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.53-59, 2003-03

体動測定機器を用いて,病院に入院している高齢者の睡眠および看護師の観察の実態を把握し,体動測定機器(リストケア)を使用した睡眠に関する観察支援方法を検討する目的で研究を行った.2事例の分析から病院に入院している高齢者の睡眠障害には「入眠困難」,「睡眠中断」,「覚醒の持続」という睡眠の障害が見いだされた.また「覚醒の持続」では,患者の言動は混乱状態であった.覚醒の持続のきっかけとなった要因として,過剌激による入眠困難,睡眠中断があることで睡眠時間の確保が困難であったこと,および身体拘束による心理的なストレスが加わったことが考えられた.また看護師が行うことは難しい継続的な睡眠状態をモニタリングでき,患者・看護師双方に負担の少ない生体計測システムを実践に活用することで,高齢者の睡眠状態に応じたケアを提供したり,混乱状態を予防するケアを開発することが可能になると考えられた.