著者
飛鷹 範明
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

【目的】近年、大腸がん化学療法においてカペシタビン(ゼローダ[○!R])を含むXELOX療法が汎用されている。一方、副作用として手足症候群(以下、HFS)を誘発し、患者のQOLを低下させる。さらに、HFSが認められた場合は減量・休薬される場合があり、HFSをコントロールしてQOLを維持しながら治療を継続していく上でHFSの治療は極めて重要である。しかし、カペシタビンによるHFS発症機序は不明であり、病態解明や治療薬探索・開発を行う上で重要なモデル動物に関する報告もない。そこで、カペシタビンによるHFS発現状況やHFSに対する対症療法の現状を明らかにし(臨床薬学的研究)、さらに、カペシタビン誘発HFSの実験モデル動物の作成を試みた(薬理学的研究)。【臨床薬学的研究】2012年4月~2013年3月末までに愛媛大学医学部附属病院においてゼローダ[○!R]錠が新規処方された患者を対象に処方調査を行った。【薬理学的研究】実験にはWistar系雄性ラット(6-8週齢)を用い、ゼローダ[○!R]錠(300, 500, 1000mg/kg)を1日1回28日間経口投与した。その後、一般行動(足を振り回す行動、舐める行動、自発運動量計測)と症状(紅斑、発赤、腫脹等)の観察を行った。【結果】処方調査より、調査期間中にゼローダ[○!R]錠は30名に新規で処方されていた。そして、30名中20名に何らかの皮膚障害の発現がみられた。薬剤として、血行促進・皮膚保湿剤、NSAIDs内服、ビタミン剤内服等が処方されていた。薬理学的検討より、ゼローダ[○!R]錠を1日1回28日間反復経口投与したが、各投与量において一般行動および症状の変化は認められなかった。【考察】ラットに1日1回28日間ゼローダ[○!R]錠を反復経口投与したが、HFSの実験モデル動物は作成できなかった。この要因として、ヒトおよびラットにおける各臓器の酵素活性の分布等が異なるためと考えられた。