著者
飯塚 宗夫 セイソ ラボ レミヒオ マドリガル
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.151-158, 1978-06-01
被引用文献数
1

高等植物の花器諸器官は世代交代の上からみて最も重要な機能を持ち,蕚,花弁,葯,花糸,雌蕊,花盤など,それぞれ属・種の特徴ある形態に分化している。これら,花結諸器官は,もちろん,もとをただせば,同一の遺伝質をもった細胞から構成されているはずである。本研究はこのような花器諸器官を置床し,カルス形成,新器官や新個体の分化,分化個体の特性などについて調べ,分化に関する基本的諸知見を得ると共に,急速増殖,変異の誘発など育種面への応用的技術の開発を目的としている。材料には,ハナヤサイ,ミドリハナヤサイ,ハボタン,カンラン,コカブ,ハナダイコン,ミノワセダイコンおよびウォールフラワーなどアブラナ科植物を選んだ。置床はこれら材料の花弁,葯,花糸,雌蕊,花盤(花托)を用いてそれぞれ行ない,カルス形成,分化の様相をみた。この際,まず花粉形成の進みぐあいを目やすとした供試蕾齢と培地上における分化の難易度を見た。その結果,花粉四分子〜1核期の葯を持つ蕾からとった花器の諸器官から得られた成績が最もよかった。したがって他の実験にもこの発育期の蕾を用いた。培地は,MURASHIGE and SK00G(1962)を基本とし,これにIAA,IBA,2,4-D,6-BAR(箪1表),時によりイノシン(10^<-5>M)を添加調整した。カルス形成は,蒲を置床した場合,軽度に見られるに過ぎないが,他器官を用いた場合には容易に行われ,特に花弁と花盤では極めておう盛であった。この場合,培地としては,2,4-D(10^<-5>M)を単独添加したM59,または6-BAR(10^<-5>M)との併用添加によるM.60がよく,ついでM.56,M.61などであった。