著者
池田 敏彦 飯尾 昭一郎
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では,河川への設置が容易で身近な小規模水力での発電を可能にする環境負荷低減型水車として,サボニウス水車と滝用水車を提案し,各々の特性評価と性能向上を目指した.農業用水路での利用を想定したサボニウス水車については,ランナ設置条件と出力特性との関係解明および,遮へい板と称する一枚の平板で出力特性を改善する方法の検討をおこなった.落差工での使用を想定した滝用水車については,Banki水車をもとに滝用水車専用ロータを設計・製作し,ロータ内部への流れを積極的に利用して出力を得る開放型貫流式ロータを提案し,その出力特性を調べた.また,滝の流量変化によるロータへの流入位置変化による性能低下を防止する方法についても検討した.得られた結果は以下のとおりである.サボニウス水車については,(1)出力特性には流路底面あるいは自由表面とランナとの距離が大きく影響し,付着流による揚力発生,巻込み流による戻りブレード凹面の圧力回復,進みブレード凹面への衝突流が出力特性を支配している.(2)遮へい板の最適設置条件を見出し,出力係数を約1.8倍の47%に増加させることができた.滝用水車については,(3)貫流タイプにしたことで,従来の衝動タイプに生じていた低速回転時のランナ内部での水のよどみが解消され,幅広い回転数領域で安定した出力を得ることができる.(4)衝動タイプと比較して,滝の流量変化に対する出力の変化が抑制される.(5)ランナ単体での出力係数は,衝動タイプの20%増加である74%が得られる.(6)平板による水流制御方法では,衝突時のエネルギー損失および水流の変動が大きく,貫流タイプでも28%の出力係数の低下となる.