著者
飯島 信司 西島 謙一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

遣伝子治療に用いられるパントロピックレトロウイルスは、外被タンパク質として水痘性口内炎ウイルスVSVのGタンパク(VSV-G)を用いており、VSV-Gのリセプターがリン脂質であるため、基本的に全ての細胞種に感染可能である。これは優れた特性である反面、バイオハザードという観点からは危険である。そこで天然状態では感染能がなく、リポフェクション試薬など特殊な遺伝子導入試薬存在下でのみ、感染性のあるウイルスをつくることを考えた。VSV-Gタンパクは28アミノ酸からなる細胞内ドメイン15アミノ酸からなる膜貫通ドメインさらに298アミノ酸からなる細胞外ドメインを有する.細胞外ドメインには2つの糖鎖結合部位があり、この部分が安定性などに重要と考えられる.そこで細胞内、膜貫通、糖鎖結合部位以外の部位を欠失させたところ、細胞外の先端から143アミノ酸を欠失させ2箇所の糖鎖結合部位を残したもの、及び末端から298アミノ酸を欠失させ糖鎖結合部位を1箇所残したものについてはリポフェクチン依存的に感染性を有していた。しかしVSV-G全長に較べ感染力は1/1000程度であった。またウイルスの細胞からの出芽状態をRT-PCRで調べたところ、変異株では1/10程度であった。一方、レトロウイルスのDNA挿入活性に対するINI-1タンパクの効果を調べるため、INI-1タンパク及びモロニー白血病ウイルスのインテグラーゼ遣伝子をクローン化した.これを用いて結合集験を行ったが、現在までのところ報告されているようなINI-1タンパクとインテグラーゼの相互作用は検出されていない。