著者
飯島 憲章
出版者
広島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

[目的]本研究では、マダイの鰓から構成的あるいは誘導的に合成・分泌される抗菌ペプチドを電荷・疎水性・分子量に基づく多次元クロマトと質量分析法を併用して網羅的に解析することを目的とした。[方法及び結果]未処理区及びLPS処理区(0.51mg LPS/100g魚体重)のマダイ未成魚(魚体重160g前後)よりそれぞれ鰓組織を採取し、液体窒素下で粉末状にした後、粗抽出液を調製した。次いで、Sep-PakC18カートリッジで脱塩した後、 SP-Sephadex C25により強酸性、弱塩基性、強塩基性の3分画を得た。この中で最も抗菌活性の高い強塩基性画分について、ゲル濾過HPLCにより分子量分画し、Fraction I〜IVを得た。そのうち、高い抗菌活性を示したFraction II、IIIついて2段階の逆相HPLCによりペプチド分画を行った。逆相HPLCの溶出画分から抗菌活性の高いピークを選択し、ESI-MSで分子量を推定した。なお、各精製段階における抗菌活性の測定には、B. sutilisを用いMBC(Mimimal Bactericidal Concentration)を求めた。ゲル濾過HPLC、逆相HPLCで得られた画分については、E. coliを用いたマイクロプレート法とB. sutilisを用いたコロニーカウント法を併用し、抗菌活性を測定した。未処理区及びLPS処理区の鰓粗抽出液から、SP-sephadex C-25、ゲル濾過HPLC、逆相HPLCにより抗菌ペプチドを精製した後、ESI-MSにより、平均分子量を解析した。その結果、未処理区のゲル濾過HPLC溶出画分Fraction. IIにおいて3種類(M. W.約3000〜7000)、またFraction.IIIに7種類の抗菌ベプチド(M. W.約1800〜4500)の存在を確認した。またLPS処理区のゲル濾過HPLC溶出画分Fraction.IIでは、未処理区で確認された抗菌ペプチドに加え、さらに2種類(M. W.約3000〜4000)が、またFraction.IIIからは5種類(M. W.約1800〜7000)の抗菌ペプチドの存在が確認された。これらは誘導型抗菌ペプチドである可能性が示唆される。現在、計14種類の抗菌ペプチドについてN末端配列を解析中である。