著者
井上 洋西 谷 典生 飯島 秀弥 五十嵐 敦 岡田 信司 瀧島 任
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.205-213, 1993
被引用文献数
4

選択的TxA_2受容体拮抗薬であるBAY u 3405が, 遅発型喘息反応 (LAR) 時の呼吸抵抗 (respiratory resistanse; Rrs) および気管支肺胞洗浄 (bronchoalveolar lavage; BAL) に与える影響を, Ascaris suum抗原感作モルモットを用いて検討した。呼吸抵抗 (Rrs) は, 30Hzオッシレーション法にて無麻酔下に測定し, 抗原吸入前のRrに対する増加率 (%Rrs) で評価した。抗原吸入2時間後, BAY u 3405 10mg/kgまたは溶媒の0.5%メチルセルロースのみを経口投与した。抗原吸入4および5時間後の%Rrsは, BAY群ではそれぞれ32.5±6.2%, 23.5±5.0%であったのに対し, 対照群ではそれぞれ101.4±27.5%, 77.5±19.9%で4および5時間後ともBAY群が対照群より有意に低値を示した (p<0.05)。抗原吸入4時間後のBALでは対照群とBAY群との間に有意な差は認められなかったが, 吸入6時間後のBAL中総細胞数, 好酸球数およびリンパ球数は, BAY群ではそれぞれ274.9±70.5, 62.5±13.1, 11.3±3.3 (×10^5cells) であったのに対し, 対照群ではそれぞれ491.9±55.1, 198.6±43.9, 32.1±7.3 (×10^5cells) で, いずれもBAY群は対照群より有意に (おのおのp<0.05) 少なかった。抗原吸入4時間後のBAL液中のhistamine (ng/ml), TxB_2 (pg/ml) およびPGD_2 (pg/ml) は増加傾向を示したが, 両群間に有意差はなく, LTC_4は, 両群とも測定限界 (20pg/ml) 以下であった。以上より, 選択的TxA_2受容体拮抗薬であるBAY u 3405は, LAR時の呼吸抵抗の上昇と気道への炎症細胞浸潤を抑制したものと考えられ, TxA_2がLARの発現に重要な役割をしていることが示唆された。