著者
古谷 圭一 田中 勇武 竹本 和夫 坂本 和彦 江見 準 瀧島 任
出版者
東京理科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究の主眼は、1.吸入粒子の呼吸器内沈着挙動の理論的実験的研究、2.呼吸器内に取り込まれた吸入粒子の種類、部位、沈着量、溶解量の評価、3.吸入粒子のフェイトアナリシスと生体影響評価である。第1のテーマに関して、人体呼吸器を16部に区別、これへの吸入エアロゾル粒子吸着とクリアランスを計算できる簡易式を開発し、その有効性を確認した、(高橋幹)、肺胞領域での吸入空気と肺内残存粒子の混合沈着機構をシミュレートできる不均一伸縮場ガラスシェル肺胞モデルを作成し、その影響が0.1μm付近の粒子に大きいことを明かにした。(江見)、第2のテーマに関して、化学形態の異なるNi化合物粒子吸入膜露実験を行ない、クリアランス期をおいて各臓器でのNi滞留量を比較した。(田中)、吸入エアロゾルスペーサーの効果をエアロゾル粒子数、粒径分布を測定し、4μm以下の小粒子を吸入させるためには大スペーサーが効果的であると結論した。(瀧島)病理解剖例を用い、人肺組織、肺門リンパ腺中の金属元素分析を行い、呼吸器病変、生活歴との相関を調査した。(竹本)気道鋳型モデル、微細気管内挿管法、吸入実験、培養肺マクロファージ試験管内実験など新手法を用い、NiO,石炭フライアッシュ,放射性BaSO_4,放射性Fe(OH)_3等微粒子の沈着量,毒性,溶解性,除去作用を明かにした。(高橋テ)、第3のテーマに関して、硫化ニッケル石炭フライアッシュの各種培養液への溶解挙動を明らかにした。(古谷)、フラッシュ脱離・質量分析法を開発し、ラット肺中数ngのPHAの定量に成功した。(飯田)レーザー励起蛍光・ミセル動電クロマト法を開発し、fgのPHA定量を可能とした。(今坂)モデル肺液へのPHA溶解度を測定する装置を開発し、生体影響評価に役立つ結果を得た。(坂本)本研究は、10名の相互の協力により、共通試料の提供、専門知識、設備の利用により、きわめて新しい成果を得ることが出来た。
著者
月岡 一治 牧野 荘平 宮本 昭正 高橋 昭三 冨岡 玖夫 伊藤 幸治 足立 満 可部 順三郎 中島 重徳 瀧島 任 大橋 靖雄 浜田 知久馬 宮澤 正治 若菜 明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.442-450, 1996
被引用文献数
13

厚生省アレルギー総合研究事業(企画評価委員長:宮本昭正)・喘息班では日本の喘息治療ガイドラインの運用に不可欠な日本人のピークフロー(以下PEF)標準値の検討を行ったのでその結果を報告する. 対象は喫煙経験がなく, 胸部疾患と喘鳴の既往歴がないボランティアの日本人健常人2785名で, 男性は1047名(15歳から84歳, 平均30.3歳), 女性1738名(15歳から80歳, 平均40.6歳)である. PEFメーターは市販されている4機種(ミニライト, アセス, パーソナルベスト, バイタログラフ)の各スタンダードレンジを用い, 全てATSスケールで測定した. その結果4機種のPEF値は同一の健常人が数分の間隔をおいて連続して測定したにもかかわらず, 男女共に, 分散分析の結果, 機種間で明らかな差が認められ, PEF標準予測式は男女別, 機種別に求めなければならなかった. 三次関数で得られた日本人の予測値は英国人に近似していたが, 中国人とは異なっていた.
著者
井上 洋西 谷 典生 飯島 秀弥 五十嵐 敦 岡田 信司 瀧島 任
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.205-213, 1993
被引用文献数
4

選択的TxA_2受容体拮抗薬であるBAY u 3405が, 遅発型喘息反応 (LAR) 時の呼吸抵抗 (respiratory resistanse; Rrs) および気管支肺胞洗浄 (bronchoalveolar lavage; BAL) に与える影響を, Ascaris suum抗原感作モルモットを用いて検討した。呼吸抵抗 (Rrs) は, 30Hzオッシレーション法にて無麻酔下に測定し, 抗原吸入前のRrに対する増加率 (%Rrs) で評価した。抗原吸入2時間後, BAY u 3405 10mg/kgまたは溶媒の0.5%メチルセルロースのみを経口投与した。抗原吸入4および5時間後の%Rrsは, BAY群ではそれぞれ32.5±6.2%, 23.5±5.0%であったのに対し, 対照群ではそれぞれ101.4±27.5%, 77.5±19.9%で4および5時間後ともBAY群が対照群より有意に低値を示した (p<0.05)。抗原吸入4時間後のBALでは対照群とBAY群との間に有意な差は認められなかったが, 吸入6時間後のBAL中総細胞数, 好酸球数およびリンパ球数は, BAY群ではそれぞれ274.9±70.5, 62.5±13.1, 11.3±3.3 (×10^5cells) であったのに対し, 対照群ではそれぞれ491.9±55.1, 198.6±43.9, 32.1±7.3 (×10^5cells) で, いずれもBAY群は対照群より有意に (おのおのp<0.05) 少なかった。抗原吸入4時間後のBAL液中のhistamine (ng/ml), TxB_2 (pg/ml) およびPGD_2 (pg/ml) は増加傾向を示したが, 両群間に有意差はなく, LTC_4は, 両群とも測定限界 (20pg/ml) 以下であった。以上より, 選択的TxA_2受容体拮抗薬であるBAY u 3405は, LAR時の呼吸抵抗の上昇と気道への炎症細胞浸潤を抑制したものと考えられ, TxA_2がLARの発現に重要な役割をしていることが示唆された。